2018年3月8日木曜日

第1823話 江戸のはずれの江戸川区 (その1)

東京23区、ところ嫌わずに何処へでもゆくが
出没率の低いのは世田谷区・練馬区・品川区あたりか。
中でも江戸川区ではめったに飲まないなぁ。
たまさか訪れるのは小岩くらいのものだ。

そうだ! 江戸川区へ行こう!
心に決めて出掛けて行った。
思えば、ここひと月以内に市川市、江東区、
そして江戸川区と、江戸城の東ばかりを攻略している。

声を掛けたのは酒豪の友人。
このヒトはいくら酒盃を重ねても乱れない、崩れない。
それ以上に舌を巻くのは
ハシゴをしてもどこで何を飲み、何を食したか、
一品もらさず記憶しているのだ。
シャッポを脱ぐとはこのことである。

待合せるのは都営新宿線・船堀駅。
例によって小半刻ばかり早く到着した。
駅の周辺をぶらぶらするのも一興なれど
ノドの渇きに耐えかねて
あらかじめ目星をつけていた1軒目に向かう。

南口に出て船堀街道沿いをゆく。
短い距離ながら都内には珍しいクスノキの並木道を歩く。
徒歩数分で「百味家」に到着。
店先で十数台のチャリンコの出迎えを受けながら入店した。

うわっ! たくさん居るネ、
みんな飲んでるネ、とてつもなく喧しいネ。
明るい時間にかようなドリンキング・シーンに遭遇するのは
新丸子の「三ちゃん食堂」以来じゃなかろうか。

陽気な飲み手のJ.C.はこんな情景を苦にしないが
陰気な飲み手には相当ツラいかもしれない。

白玉の歯にしみと ほる秋の夜の
酒はしづかに飲むべかりけり

若山牧水の名歌が思い起こされる。
秋の夜はいざ知らず、春の宵なら静かでなくともよい。
こよなく酒を愛した牧水だが
日に一升は飲み過ぎだろう。
そのせいか、四十路半ばにして亡くなっている。
病名は肝硬変、さもありなん。

かく言うJ.C.も毎晩、一升酒を浴びている。
ただし”升”と”酒”の間に”麦”の一字が入りますけどネ。
そう、一升麦酒ですな。
よって肝硬変とは無縁、と言いたいところなれど、
ガンマGTPの数値はかなり高い、いや、異常に高い。
自慢じゃないけどネ。

=つづく=