2018年3月9日金曜日

第1824話 江戸のはずれの江戸川区 (その2)

江戸の東端、江戸川区は船堀に来ている。
この町随一の大衆食堂兼大衆酒場「百味家」に独り。
まず入口に重なったトレイを持って
ボードに並ばったつまみ類をピックアップする。

いずれも小鉢のらっきょと酢のもの、
そして小皿のピーマン肉詰めを選んだ。
小さいポーションが好都合である。
飲みものはスーパードライの中瓶。
こちらはオバちゃんがテーブルに運んでくれた。

らっきょはシンプルによい。
酢のものはわかめときゅうりにタコがちょこっと。
ひたひたの酢にごま油が香り、瞬時にコリアンの風が吹く。
わかめと酢は身体にもよさそうだ。
チンして温めてくれた肉詰めはジューシーでなかなか。
中瓶はすぐに空いた。

待合せの時間になったのでダイヤル。
道筋を説明してお越し願う。
数分後、現れた相方がトレイに乗せたのは
マカロニサラダと厚揚げ焼きであった。

いや、それにしても喧しい。
ジモティがあっちゃこっちゃで飲み会を催しているから
騒音のデシベルは半端じゃない。
先が長いし、長居は無用と次に向かった。
二人で飲んだのはビール3本なり。

船堀街道を北上する。
真っ直ぐ行けば道は二又の追分となり、
右は千葉街道、左は平和橋通りとその名を変える。
追分の手前右手の松江3丁目に「伊勢周」はあった。
数年前に建て替えられたが
以前は昭和の酒場そのものだったという。

昭和29年の創業時と変わらぬ風味を保つ酎ハイで乾杯。
焼酎を割るのは天羽の梅。
梅エキスの含有はないけれど、
東京の、主として東部でポピュラーな割り材だ。

突き出しは少量のもつ煮込み。
これなら煮込みは要らないと思われるものの、
つい誘われてオーダーに及ぶ客が多いようだ。
店側からすれば、お味見をどうぞという腹積もりだろう。

数ある品書きから、われわれが頼んだのは
つぶ貝の刺身とまぐろぶつ、それに山芋の漬物。
つぶは軽く湯通ししてあり、本来の魅力を失い気味。
まぐろのほうがよかった。
山芋はぬか漬け・塩漬けではなく、
漬け汁にひたしてあるらしい。
何よりも居心地のよさに酎ハイのピッチが上がっってきた。

=つづく=

「船堀食堂 百味家」
 東京都江戸川区船堀3-2-3
 03-3869-6610