2018年6月11日月曜日

第1890話 ローラじゃないわ ドローラよ (その2)

NHK・FM「オペラファンタスティカ」の「仮面舞踏会」。
ヴェルディ中期の傑作である。
キャスト紹介にドローラ・ザジックの名を聞いて驚喜した。
そう、ローラじゃなくってドローラ。
役柄は女占い師というか、ほとんど呪術師のウルリカである。

アメリカでもっとも成功を収めたメゾソプラノの一人に
数えられる黒人歌手は
オレゴン生まれのネヴァダ育ちの66歳。
彼女を初めて観たのは1991年12月28日だった。
メトロポリタン歌劇場(以下メト)における「アイーダ」で
実はこれがわが人生初のオペラ鑑賞であった。

おつき合いで同行した初オペラはよく判らなかったものの、
漠然と自分にはミュージカルより
オペラのほうが合ってるな、そう感じたのも確かだ。
オペラに出会うまでは人並みにブロードウェイに出掛けた。
「コーラス・ライン」、「ミー・アンド・マイガール」、
「レ・ミゼラブル」、「オペラ座の怪人」、「美女と野獣」、
「ミス・サイゴン」、つらつら思いだすに
スラスラ出てくるのはそこそこ観てる証しといえよう。

それがヴェルディの「リゴレット」や「ラ・トラヴィアータ(椿姫)」、
プッチーニの「トスカ」や「ラ・ボエーム」や「トゥーランドット」、
はたまたモーツァルトの「フィガロの結婚」など、
とっつきやすい演目をむさぼるように観続けることとなる。
ブロードウェイよさようなら、リンカーンセンターよこんにちは。
日常生活にコペルニクス的転回が訪れたわけだ。

さて、初体験のオペラ「アイーダ」の際、
エジプトの王女アムネリスを演じたのがドローラ。
タイトルロール・アイーダの恋敵だが
素人の目と耳にさほどの印象が残ったわけでもなかった。

先述のように、いつしかオペラにハマッてメト通いのJ.C.。
それなりに耳目が肥えたのだろう、
’94年2月5日に再度、同劇場にて
「アイーダ」に接したときは感動に身を震わせましたネ。

とりわけドローラのアムネリスには鳥肌が立ちまくる。
ドラマティックでありながら澄み切った声色に魅了された。
以後、ドローラ・ザジックの名は
我が脳裏に深く刻まれたのでした。

もっとも劇中、ちょいと太めの彼女が
ステージを走り抜けるシーンでは
富永一朗の漫画、
「チンコロ姐ちゃん」を連想してしまい、
思わず苦笑いしたのも事実だった。

まだまだ現役で頑張るドローラ。
ソプラノに比してちとドロくさい役回りが多いメゾだが
これからも末永く歌い続けてほしいのです。