2018年6月15日金曜日

第1894話 再訪かなった松陰神社 (その1)

あれは去年の7月初旬だった。
小田急線・梅ヶ丘駅近くの「いこま寿司」で
ちらし寿司をいただいたあと、訪れた松陰神社。
その参道に1軒の中華屋を見つけ、
あふれる昭和の匂いに懐旧の思いを抱いた。

即座に連想したのは
小津安二郎の遺作、「秋刀魚の味」。
東野英治郎と杉村春子の父娘が営む、
うらぶれた町中華が脳裏をよぎったのだ。

照明を落とした店内は薄暗く、
中休みの時間帯の様子だった。
以来、行こう行こうと思っていたものの、
なかなか機会に恵まれず、
飲む・食う・歌うの相棒を誘って
ようやく願いがかなう運びとなった。

東急世田谷線・松陰神社前で落ち合う。
踏切を渡り、神社に向かって進むと
「一番」の袖看板が見えてきた。
切盛りはオバアちゃんとオバちゃん、
それに若い男性の3人である。

先客はカウンターに1人、4人卓に1組。
ほとんど食事は終っている。
4人卓をすすめられたがカウンターに着いた。
照明のせいか、最初のイメージより明るく、
さほど古びてもいない。
それでも昭和の匂いが濃厚に漂っている。

接客のオバちゃんにキリンラガーの中瓶をお願いし、
菜譜に目をこらす。
タイトルロールの一番メンには
いろんな具が入っていて、塩味卵とじあんかけ
の但し書き。
これをごはんに盛ると一番丼となる由。
餃子には
手造りにて、売り切れ御免。5つ。
とある。
味噌ラーメンの隣りに
他店では見掛けぬ”味噌つゆなし”というのがあって
竹の子、しいたけが具。
とのこと。
なかなか親切な説明である。

吟味に吟味を重ね、ラーメン・餃子・チキンライスを所望。
さっそく調理担当のオバアちゃんが動き出した。
あれっ! あれれれっ!
オバアちゃんじゃなくてオジイちゃんじゃんか!
よく見りゃ、白髪にパンチパーマがかかってるヨ。
バッハみたいな頭してるから、てっきり女性かと思ったぜ。
相方はお茶の水博士と呼んでたがネ。

=つづく=