2018年6月13日水曜日

第1892話 北へ南へ 亀有の迷走 (その2)

JR常磐線・亀有駅の改札を抜けて北口に出た。
今宵の相方と会いまみえる前に
行き掛けの駄賃にあずかろうという腹積もりである。
焼きとんの「江戸っ子」は本日休業。
閉まっているシャッターを尻目に道を真っ直ぐ歩いて行った。

駄賃は「大八たから丸」。
漁船みたいな屋号の店は生モノ中心の立ち飲み酒場だ。
店内には常連と思しき先客が一人のみ。
サッポロ黒ラベルの中ジョッキをお願いする。
1杯390円は安いっちゃ安いネ。

本日のオススメからスミイカ刺し(490円)を選択した。
真っ白い身肉の上にトビッ子が添えられている。
味覚的には必要ないが彩りを重視したのだろう。
白い皿に白いイカだけじゃ殺風景だ。

これがなかなかに美味しい。
最初の一噛みはコリッ。
咀嚼を続けるとネトッ。
コリッネトですな、こいつは―。

気をよくして生中をお替わりしながら店主に訊ねた。
「平目とインドの赤身、どちらかオススメのほうを」
「平目じゃないですかネ」
「じゃ、ソレを」
はたして平目刺し(590円)はスミイカほどではなかった。
もうちょい硬直を残して歯応えがあったほうがよい。
お会計は1860円也。

亀有駅に舞い戻り、相方を拾って南口の「こぶた」へ。
北口の「江戸っ子」同様に焼きとんをウリとする居酒屋だ。
オリジナル酎ハイ(300円)のグラスを合わせた。
ん? 何だろう、コレ? バニラのような甘い香りがする。
好みのタイプじゃないな。

カシラを塩、シロ、レバをタレで2本づつ発注。
まずまずの焼き上がりながら特筆するものはない。
平均値よりやや上かな? といった印象だ。
グループ客が数組入店してきたので
早々のお勘定は1310円と割安だった。

次に向かったのは再び北口の「空(くう)」。
実は「大八たから丸」を出たあとで当店の前に差し掛かり、
店頭の品書きにそそられたのだった。
経緯を伝えると、相方の瞳が期待感に輝き始めた。

ところが、とかく人生はままならぬ。
スーパードライで本日2度目の乾杯をしたとき、
希望が瞬時にして絶望に変わることなど、
われわれの想像の範囲を超えていた。

=つづく=

「大八たから丸」
 東京都葛飾区亀有5-20-8
 03-5613-8540

「こぶた」
 東京都葛飾区亀有3-40-5
 03-6323-0126