2018年6月12日火曜日

第1891話 北へ南へ 亀有の迷走 (その1)

しばらく遠征していなかった葛飾区・亀有。
そう「こち亀タウン」ですな。
かつてこの町は亀有ではなく亀無、
あるいは亀梨と呼ばれていた。

かつてといってもはるか昔で
鎌倉幕府滅亡後の室町時代から戦国時代、
さらには江戸時代初期までのことだ。
それが江戸幕府開府後数十年を経過して亀有となった由。
有ると無しでは正反対だから
世にも珍しい改名といえよう。
まっ、亀無でも亀有でも、こち亀はこち亀だネ。

その亀有に東欧料理の店があると聞き及んで
訪れるつもりになったのだった。
誘いを掛けたのはワイン好きの旧知の友。
飲める場所にはどこにでも現れる御仁である。

日取りを決めて予約の電話を入れると
なんでも当日は臨時休業なんだと―。
JR日暮里駅前の広場にて催される、
イベントに出店するんだと―。
なんだってわざわざ葛飾区から
荒川区にしゃしゃり出て行くんだよぉ!
ご苦労なこったが、こちとらには迷惑だ。

この旨、相方へは報告しなかった。
やりとりが面倒くさいし、代替店など簡単に見つかる。
時の流れに身をまかせて
そのまま亀有駅で落ち合うことにした。

その夕べ。
時間を少々もてあましたので日暮里へ。
くだんのレストランの屋台を
冷やかしてみようと思ったのだ。
予想通りにあまりパッとしなかったが
出店(でみせ)とは元来、こんなものであろうヨ。
ほかに惹かれる店とてなく、早々に立ち去った。

日暮里と亀有はJR常磐線で繋がってはいるものの、
北千住で各駅停車に乗り換えなければならない。
メトロ千代田線の延長線上だから
亀有と金町は東京メトロの駅として
認識している乗客も少なくないだろう。

「こち亀タウン」に到着。
待ち合わせの時間にはまだまだ余裕があった。
今宵の候補を何軒か頭に思い描く。
相方は穏やかな性格の持ち主だから
急な変更にもヘソを曲げることはない。
ましてや、あのアホウみたいに
もとい、アソウみたいに唇を曲げることなどあり得ない。
まったくもって、あり得ないバカだヨ、
あのひょっとこ野郎は―。
あゝ、書いてて気分が悪くなってきたぜ。

=つづく=