2018年6月1日金曜日

第1884話 「やかん」のやかんはヤバかった (その1)

極上のデミ・グラスに魅了されたあと、
徒歩にて大岡山の町へ向かった。
15年前に歩いた同じ道すじである。
住宅街を抜けて洗足駅前のいちょう通りに出た。

一度訪れたことのある日本そばの「森もと」は健在。
目黒線の線路を渡って洗足駅の反対側へ。
イタリアンの「トリノ」も営業を続けている。
歓ばしい限りなり。

「杉山亭」を出て20分あまり、大岡山に到着した。
予定通りに北口商店街を歩く。
時刻は15時半、狙いを定めた「大衆酒場 やかん」へ。
普段は17時開店ながら週末は15時に暖簾を出す。

界隈では人気を誇る酒場と聞いていたが
ちょいとばかり拍子抜けの感あり。
下町を中心として
都のイーストサイドに流れる空気とは異質の匂い。
情緒に欠ける雰囲気が漂う。

大きなL字カウンターに先客は単身の男性が二人のみ。
ところがすぐに入店してきたグループは
奥のテーブル席に誘導された。
そのあとの女性二人組はJ.C.の隣りに着いた。

アサヒの中ジョッキを傾けながら品書きの吟味。
シーフードサラダはいただいたものの、
ハンバーグのあとだから魚系から択ぶつもりだ。
あじフライ(300円)と豆あじフライ(330円)に目がとまる。
なぜか豆あじのほうが高い。

カウンターのオニイさんに
「豆あじは南蛮漬けじゃなくてフライなの?」
「フライですヨ」
ホントかな? サスピシャスになりながらも
「じゃ、ソレください」

はたして運ばれたのは
黒胡麻をまぶした小麦粉をはたいただけの唐揚げだった。
しかもアタマが硬いのなんのっ!
豆あじだから小柄なんだが7尾も盛られている。
添えられたレモンを搾り、挑んでみたものの、
こりゃ到底、食べ切れんわ。

1尾目はアタマから丸ごと。
あとはアタマを外してどうにか5尾までやっつけた。
「やっぱ、アタマ硬いですか?」
「うん、かなり硬いネ」
ここで豆あじはギヴアップとなりました。

=つづく=