2018年6月26日火曜日

第1901話 鮨屋転じてカレー屋に

上野は不忍池のほとりをめぐったあと、
不忍通りを北上していた。
根津から千駄木に差し掛かったとき、一棹の幟に出会った。
=スパイスカレー とくじろう=
変わった店名である。
昨今、大阪由来のスパイスカレーが
下北沢辺りから都内各地にまん延し始めているらしい。

そもそもスパイスカレーって稚拙なネーミングは何なんだ?
カレーにスパイスは当たり前じゃないの。
言わば、うどんを出汁うどんと呼ぶが如し。
いまだ大阪系のスパイスカレーを食べる機会に恵まれず、
いえ、機会なんぞいくらでも作れるんだが
とにかく食べたいという気が起こらない。

でも、このときは何の抵抗もなく、
「とくじろう」の店先に立ったのだった。
大阪のソレとは違うタイプみたいだし・・・。
不忍通りから小道に入ってすぐの場所。
店頭のメニューに見入った。
カレーは牛すじ、牛タン、キーマの3種が基本で
すじとキーマを合わせたダブルというのが売れ筋のようだ。

店内はカウンターが5席、2人掛け2卓、
3人掛け1卓とかなりコンパクトで先客は2組。
以前は鮨屋だったというが
こんなところに鮨屋なんかあったかいな?
まったく記憶にない。

カウンターの端に座って牛すじカレー(790円)を通す。
ほどなくサーヴされた大きな陶器のどんぶりには
真ん中にライスの島、その上に牛すじの丘、
そして周りを取り囲むようにカレーの海。
食卓でちょいとしたリゾート気分が味わえた。

こうなると政府・自民党が躍起となってる、
IRなんて必要ないんじゃないの。
そもそも現在の日本人の民度に照らすと
カジノとオペラはまだまだハードルが高すぎるんだ。
年間21兆円もパチンコに費やす国民性から
少しでも脱却するのが最初の一歩であろうヨ。

さて肝心のカレーである。
元鮨職人がカレー職人に転じて作るカレーである。
ボリュームはじゅうぶん。
牛すじもケチケチしていない。

ひたひたのソースをすくって口元に運ぶ。
ファーストアタックはクローヴ、いわゆる丁子だ。
他のスパイスはほとんど抑え込まれている。
美味いか不味いかと問われたら美味いと応えたい。
ただ、カレーらしいカレーではない。

牛すじ、牛タンはたっぷりだから
当店のカレーはカレー好き向けではなく、
肉好き向けでありますな。

「スパイスカレー とくじろう」
 東京都文京区千駄木2-47-10
 03-6338-8373