2018年7月4日水曜日

第1907話 みちのくから来た女将 (その1)

ヘアカットのために渋谷へ。
メトロ千代田線・明治神宮前(原宿)で下車。
雨の中をビニール傘をさして歩く。
カット&シャンプーにつき、所要時間は40分ほどだ。
頭はサッパリしたが雨脚はかなりのものがあった。

この日のターゲットは京王線・幡ヶ谷の「のっこい」。
みちのく出身の若女将がたった一人で切盛りする店は
小料理屋というか日本酒バーというか、
まっ、そんな感じの佳店である。

バーの居抜きのような店内は
カウンター6席のみと超コンパクト。
よって、訪れてもフラれる客があとを絶たない。
近所ならともかく遠方からやって来て
空振りの憂き目を見るのはキビシすぎる。
転ばぬ先の杖、電話予約をしておいた。

マイ・ヘアサロンは只今建て替え中の渋谷区役所前。
ここは渋谷区のコミュニティ・バスの発着点でもある。
笹塚駅行きの路線に乗り、笹塚中学前で降りた。
雨はさらに強さを増している。
篠突く雨とはこういうのを言う。

どうにか開店時間の17時ちょうどに到着。
当然のことながら先客はいない。
いないが1分と経たずに地元の常連さんが入店してきた。
女将と交わす言葉のやりとりから
気心の知れた仲を推し量ることができた。

ビールはサッポロ黒ラベルの生か、瓶の赤星。
生をお願いした。
手入れが行き届き、清潔な店では安心して生ビールを頼める。
そうでないところは瓶に限る。
高級店だろうが場末のボロ屋だろうが
瓶は栓を抜くだけだからネ。

同じく生ビールを注文した常連さんが
立て続けに3品のつまみを通した。
当方は少々、間を置かないと女将の手が忙しくなる。
この間を利用して卓の品書きと
壁のボードを入念にチェックした。

品書きの定番に加え、チョークの文字は20品にも及ぶ。
これだけでこの女将、只者でないことが明らかだ。
只者ではないが、くノ一でないことも明らかだろう。
よって客は懐の手裏剣に手を伸ばさずに済む。

熟慮の末にお願いしたのは
おかあさんのらっきょう(200円)と
マカロニポテトサラダ(350円)。
サッと出せる作り置きを択んだ次第なりけり。

=つづく=