2018年7月31日火曜日

第1926話 インドまぐろの三種盛り (その2)

上野駅の東側、旅館の並ぶ界隈の地番は東上野3丁目。
思い出すのは東宝映画「駅前旅館」(1958)だ。
”駅前シリーズ”第一作に位置付けられる名作は
森繁&伴淳のゴールデンコンビによる掛け合いが素晴らしい。
殊に江の島を舞台にした客引き口上の見事なセリフ回し。
当時は客引きの腕を磨くため、
全国の旅館から番頭たちがこの狭い島に集結したと聞く。
ホンマかいな?
それはそれとして
あゝ、わが国に名優絶えて久しい。

相対的に数を減らしたものの、
エリアには中小のホテルや旅館がいまだに残る。
代わりに浅草通りの北側、東上野4丁目あたりに
続々と新しいホテルが生まれている。

まっ、東から西から日本が今まで経験したことのない、
膨大な数の来訪者が押し寄せているから
東京オリンピックまでは上野に限らず、
23区の繁華街はこんな状況が続くのだろう。

旅館街を抜けてリトル・コリアに出た。
コリアンの料理店・食料品店・精肉店などが並んでいる。
J.C.より一つ年かさの老舗、
「板門店」も健在で盛業を続けている様子だ。

昭和通りを西に渡って昼飲みのメッカへ。
この界隈は上野6丁目。
線路をはさんでアメ屋横丁の反対側に当たる。
しっかし、何処からやって来たものか、
明るいうちからよくもまあ、
これだけの呑み助が集まったものよのぉ!

上野・浅草において
昼酒で後ろ指を指されることはない。
むしろ東京の二大聖地に来て
飲まない人のほうがバカにされる・・・
何てことはないけれど、
J.C.は飲まぬくらいなら上野・浅草には行かない。
敬愛する池波正太郎翁がのたまう、
「飲まぬくらいなら蕎麦屋には入らぬ」
その至言と同じことなのだ。

さて、やって来た「かのや」。
前回は広々とした2階テーブル席だったが
今回は単身につき、1階のカウンターに通された。
あれ~、この場所は以前、
「一力」という焼きとん屋だったハズだがなァ。
レイアウトに見覚えがあるから間違いない。
いつのまに侵食されちまったんだろう。
思わず首を傾げたものである。

=つづく=