2018年7月10日火曜日

第1911話 墨田の果ての鐘ヶ淵 (その1)

墨田区の北の果て、
墨田5丁目に東武伊勢崎線・鐘ヶ淵駅はある。
かつてここに鐘淵紡績(カネボウ)の大工場があった。
現在はさびれにさびれ、外部からの訪問者も少ない。

そんな土地柄に思うところあって出掛けて行った。
浅草で一飲を喫したあと、伊勢崎線に乗って参上。
一つ手前の東向島(旧玉ノ井)駅は
高架化されているが、こちらは地上駅。
駅舎、踏切に昭和のよすがを偲ぶことができる。

一時、店をたたんでいたものの、
近くの古民家に移転し、営業を再開した「はりや」に入店。
なるほど雰囲気は悪くないけれど、
段差のある設いは居心地がよいとはいえない。
女将と若い娘の物腰や接客ぶりに余分な媚びはなく、
あくまでも自然体ながら、
客によっては冷たさを感じる向きもあろう。
ちょいとばかりシレッとしている。

浅草でビールを飲んできたからここではジンハイ。
いわゆるジンソーダはバーの定番だが
酒亭・居酒屋ではめったに見ないドリンクである。
ジンでもラムでもウォッカでも
氷と炭酸でグラスを満たす飲み方は好きだ。

当店の名物のゲソ天とキャベツ炒めを通した。
ここの料理は名が体をまったく表しておらず、
ゲソ天はそのままイカゲソの天ぷらではない。
細かく刻んだゲソ入りのお好み焼きなのだ。
よって、粉モノを愛する相方は歓びを隠さない。

キャベツ炒めもまたしかり。
少なめながら麺が入った焼きそばである。
でも、呑み助にこういうのは意外とうれしく、
ありそうでなかった妙案といえよう。

もっと巷に普及してしかるべきで
たまさか焼きそばや皿うどんを
つまみとするJ.C.にはありがたい。
粉モノ好きの相方はさらに相好を崩している。

週末の夜ということもあり、
家族連れの姿が目立ち、徐々に立て込んできた。
酒場において1杯だけで
立ち去る不作法を極力避ける常日頃。
今回は後続に席を譲る意味合いもあって
速やかなるお勘定は2千円でオツリがきた。

2軒目へ向かう。
駅から北へ延びる、くすんだ商店街に目当ての店はあった。

=つづく=

「はりや」
 東京都墨田区墨田2-9-11
 03-3612-9888