2018年7月27日金曜日

第1924話 猛暑日のブイヤベース・ラーメン (その2)

Tシャツに汗を吸わせながら歩いて来た「稲荷屋」。
店内は涼しく快適である。
いかに辺鄙な場所でも棲めば都。
どんなに猛烈な暑さでも涼めば天国。
人はそうして環境に適応してゆくのだ。

そんなことよりブイヤベース・ラーメンだった。
皿の海から丘に目を移す前に
海には小さな花が散っていたのを思い出す。
数片の可憐な薄紫は花穂である。

花穂というのは紫蘇の葉(大葉)の花のこと。
刺身のあしらいに添えられる紫蘇は3種類。
一般的なのは大葉。
茎に実を成らせたのが穂紫蘇。
つぼみが開いたのは花穂。
である。

ナスタチウムにマーシュに花穂。
これだけでも人気ラーメン店のアルジが併せ持つ、
センスとデリカシーを垣間見ることができた。
前回食したワンタンメンのワンタンはいただけなかったが
ラーメン・アラ・フランセーズに期待の高まりを覚えた。

皿の丘には3種類のフリュイ・ド・メール(海の幸)。
ブイヨンでゆでられた黒鯛・いか・帆立である。
2切れの黒鯛ははじめ鰆かと思ったが特有の臭みがない。
何だろう、黒むつかな? それにしちゃアッサリしている。
店主に訊ねて判明した次第だ。

いかは森永ミルクキャラメルのような粒が2片。
かなりの厚みからコウイカであることが判る。
それもモンゴイカだろうな。
帆立は貝柱が1つほっこりと―。
よく見れば魚介の下にうっすら黄色いソースが敷かれている。
これはブイヤベースに付き物のアイオリ(ニンニクマヨネーズ)。
願わくばもっとタップリ添えてほしかった。

券売機の貼り紙にあるように限定フレンチ版は量が少なめ。
これはラーメンで満腹にしたくない向きにはむしろ好都合。
すんなり居酒屋へ移動できるからネ。
美味しく食べ終えて考えた。
さて、どこへ向かうとしようか?

稲荷町は上野と浅草のちょうど中間点。
思いをめぐらせていたら芭蕉師匠の名句が脳裏をかすめた。
 花の雲 鐘は上野か 浅草か
J.C.の心境を詠むと
 花の午后 酒は上野か 浅草か

これがもし高倉健扮する昭和の残侠、花田秀次郎なら
 ノガミに戻るか エンコに往くか
そんなセリフが口をつくのでありましょう。

「らーめん 稲荷屋」
 東京都元浅草2-10-13
 03-3841-9990