2018年10月3日水曜日

第1972話 37年ぶりのジャージャーメン (その2)

川崎はチネチッタ近くの「成喜」で
キリンのハートランドを飲んでいる。
心身ともに解放された至福の昼下がり。
昭和の匂いが店内のそこかしこに立ち込めて
古く良かりし中華料理屋そのものだ。
むろん頭上を中国語が飛び交うこともない。

届いた第一便は焼き餃子。
こんがりと焼き目が付いているのに油っ気がない。
シンプルかつ上品な姿に笑みがもれた。
包む皮は厚くなく薄くなく、
餡にしても肉々しさや菜々しさに偏ることなく、
巧みなバランスの妙を楽しませてくれる。

海老炒飯がまたけっこう。
これも油控えめにしてパラリと炒められ、
海老への火の通し浅く、噛めば身肉がプリッと弾ける。
ケレンなき塩味仕立ては炒飯の王道をゆく。
旨味調味料が使われていようが主張させてはいない。
家庭では出せない味がここにあった。
炒飯に付きものの清湯に青海苔が散っており、
微細なところにも気配りが感じられた。

以上2品で期待はより高まった。
”近所にあったら通っちゃうお店”―
よく耳にする言葉ながら
この店にはピッタリのフレーズだろう。

いよいよ37年ぶりのご対面だ。
ザージャーメンの具材は肉味噌、きゅうり、長ネギ。
湯切り麺につき、これにも青海苔入りの清湯が添えられた。
注文の際に平打ち麺を択ぶこともできたが
ずっと無沙汰していたアイテム、通常の細麺をお願いした。
食べてみて気に入ったら次回は平打ちにずればよい。

はたして・・・う~ん、フツーに美味しいネ。
別段、懐かしさに襲われることもなかった。
意外にあっけなく食べ終えて、ちょいと拍子抜けした次第。
しかしながら丁寧に作られているため、
見た目はキレイだし、完成度も高い。
ジャージャーメンとして、かなりの水準に達していよう。

焼き餃子・海老炒飯・ザージャーメンと3品いただき、
マイ・ベストは海老炒飯。
このためだけに再訪してもいいくらいだが
その際はあえて焼き餃子を海老餃子に
海老炒飯を蟹炒飯に代えてみたいと思う。
今回食べられなかった湯麺・炒麺系も試したい。

創業80年のキャリアはダテじゃなかった。
川崎名物のフーゾクとギャンブルには無縁の身。
よってこの街に来たならば、
時の流れを生き延びた佳店に身をまかせたい。

「中華 成喜」
 神奈川県川崎市川崎区小川町2-11
 044-244-4888