2018年10月5日金曜日

第1974話 すじがき通りにいかぬ夜 (その1)

のみとものFチャンは
世田谷区在住ながら生まれは川崎市。
結婚までの30年間を川崎市民であり続けた。
だのに川崎市内の武蔵小杉や溝の口で
ただの一度も飲んだことがないという。
世にはかような御仁もいるんだねェ。

彼の言い訳がまたふるっている。
「ずっと市の西側より、川の北側を向いてたからネ」―
川は多摩川、その北側は東京都である。
ふ~ん、そんなもんかねェ。

ハナシがどこでどう、こんがらかったか、
武蔵小杉&溝の口をJ.C.が案内する破目に陥った。
主客転倒とはこのことをいう。
まあ、それもまた良し。

その日のプランは東急東横線。武蔵小杉の待合せ。
駅前の中華屋にて餃子でビールを飲み、
その後、JR南武線に乗って武蔵溝の口に移動し、
焼きとんをつまみにホッピー&日本酒。
あとは田園都市線・三軒茶屋の三角地帯というもの。
一度、三角地帯に連れてって以来、
奴サンはあのラビラントにハマッてしまったのだ。

夕闇せまるムサコの北口に出た。
見上げれば人気のタワーマンションが
あちこちにその雄姿(?)を晒している。
目指すは駅前のレトロ中華「大三元」である。
「大三元」となると、思い浮かぶのは錦糸町の本格中華。
続いて日暮里駅前の同名店となろうか―。

行ってみたら、ありゃりゃ開いてないぜ。
両手をブリンカー(遮眼帯)のようにして
いえ、遮るのは両眼でなくて光のほうだがネ。
窓ガラスに顔を近づけ、のぞき込むと中は真っ暗だった。
まだ中休みの時間帯らしい。

「大三元」がダメでも「七面鳥」があるサ。
そのまま東横線の高架脇を新丸子方面に歩く。
「七面鳥」なら何たって高円寺。
高円寺(中央線の駅)の高円寺(禅宗の寺)門前にある、
「七面鳥」は気に入りの町中華。
思い出したら久々に行ってみたくなった。

おう、おう、ちゃんと営業してた。
ところが何たる不運か、予約で貸し切りだとヨ。
いきなり2球続けて空振りときたもんだ。
さすがにここで思案投げ首。
武蔵小杉―新丸子の距離はやたらに短いから
前者に戻らず、後者に向かうことにする。
目指すは1軒の焼きとん屋であった。

=つづく=