2018年10月11日木曜日

第1978話 すじがき通りにいかぬ夜 (その5)

目黒新橋のたもとのバー「aki」にて
ビールとハイボールを飲み終えたところ。
こういうタイプの店ではダラダラと長居をせずに
サッと引き上げるのが粋にして鯔背(いなせ)。
さっき降りた坂を昇ってゆく。

今宵の相方はかなりの呑ん兵衛につき、
夜はまだ終わらない。
とは言っても、そろそろ最後の1軒で締めたい。
終らざる夜の帳(とばり)を無理にでも下ろさねばならない。

先刻、目星をつけていたスペインバルの店先を通りすがると、
中から接客係の女性が元気よく飛び出してきた。
さして美人というでもなく、少々薹が立っても(失礼!)いるが
語り口によどみなく、滑舌に長けている。
オッサン2人、彼女に好印象を持ちましたネ。
ってゆうか~、相方はすでに店内へ足を踏み入れちゃってるヨ。
やれやれ。

一目見たときにスペインバルと思いきや、
ここはJapanese Pinchos Bar を謳う「目黒バル ぴんちょ」。
ピンチョとは通常ピンチョスと
複数形で呼ばれることの多いスペインの酒の肴。
串に打たれたつまみだがイタリアのブルスケッタのように
薄切りパンに載せる場合もあり、いわばタパスの類いだ。

入口近くの長テーブルにいざなわれた。
相席といえば相席なんだが距離を置いて若い娘が3人、
飲みつ語りつ、楽しい時間を過ごしている景色。
女性とあらば老若を問わず、興味を示すFチャン、
早くも相好を崩している。

エイリアス ピノ・ノワールなるカリフォルニアの赤をグラスで。
1人当たり380円のチャージは突き出し付き。
ハモン・セラーノのほかにチョコチョコと3点盛りだった。
ヒルダというピクルスをあしらったピンチョ、
オニオングラタンのピンチョ、かに入りのプティコロッケを通す。
特筆するものとてないが、まっ、酒のアテだからネ。

2杯目は大好きなサントリー知多のハイボールを。
この頃にはFチャン、何をとっかかりにしたのか
三人娘と打ち解けちゃってるヨ。
いや、実に本領発揮ですな。

訊けば、彼女らは関西方面からの来訪者。
いずれにせよ、イヤな顔一つ見せずに
オッサンの相手をしてくれるんだから性格のよい子たちだ。
帰り際には揃ってハイ・ファイヴ(タッチ)を交わして行った。

むろんのことに相方はご満悦。
終わりよければすべてよし。
人生などと大げさなことを言わずとも
一夜の晩酌もまた、すじがきのないドラマでありました。

=おしまい=

「aki」
 東京都目黒区目黒1-24-9
 03-5496-1289

「ぴんちょ」
 東京都目黒区目黒1-6-13
 03-6420-3312