2018年10月18日木曜日

第1983話 鯛やほたての舞踊り (その3)

池袋西口、ロサ会館1階の「キッチン チェック」。
鯛とホタテのミックスフライが届いたところだ。
たっぷりのタルタルソースと櫛切りレモンが1片。
それにレタス主体のサラダが大きな皿を埋めている。
あとはわかめ・豆腐の味噌椀に半ライス。
どれ、いただきましょ。

両サイドとの間隔が狭いため、
ナイフ&フォークの両刀使いは断念する。
右手に持ったフォークだけで
フライを切っては突き刺し、口元へと運ぶ。

アラン・ドロン主演の「太陽がいっぱい」で
相手役のモーリス・ロネがドロンに
フィッシュ・フォークの使い方を指南するシーンがあったが
ロネ曰く
「もともとサカナにナイフは使わんもんだ」―
その通りかもしれない。
そのほうが断然スマートだ。

鯛はきわめて淡白。
特有の臭みもなく、言われなきゃ鱈と間違える向きもあろう。
ホタテもファイバーが立って質の良さをうかがわせる。
ライスと味噌碗はごくフツー。

ビールを矢継ぎばやに注文していたカップルの料理が到着した。
すぐ左隣りの娘はポークソテー、
そのまた左のオジさんは海老と何かのミックスフライだ。
いや、狭いネ、モノの置き場がないヨ。
娘のポークは木製の受け台に乗った鉄板で来たが
彼女、本来の姿である、横に置けずに縦に置いたヨ。
これは食いにくいことこの上あるまい。
J.C.は生まれて初めて目にしたネ、
ビーフステーキ、ポークソテーの類いを縦向きで食う人間を―。

しかし現代の若い娘はメゲないなァ。
両肩をすぼめているのは狭い空間のせいで
よくしゃべり、よく食べる。
そしてよく飲むんだ。
彼らの前には早くもビールの空瓶が4本並んでいる。

聞くともなしに聞いていると、
彼女、最近どこからか恵比寿に越してきたらしい。
ふ~ん、いいトコに棲んでるなァ。
けっこう稼いでるんだねェ。

ここで連想したのは深夜のTVのコント番組。
志村けん扮するお財布オジさんが
優香演じるキャバクラ嬢に
なんだかんだとタカられまくるヤツ。

(フフフッ)、笑いをかみ殺しながらの支払いは
1800円でありました。
いえ、これはJ.C.のぶんだけネ。

=おしまい=

「キッチン チェック」
 東京都豊島区西池袋1-37-12
 03-3985-1926