2018年10月17日水曜日

第1982話 鯛やほたての舞踊り (その2)

創業丸半世紀の「キッチン チェック」のカウンター。
時刻は11時45分、ピーク前だが席は8割方埋まっている。
人気店でありながら、その後、正午を回っても
順番待ちの客が列を成すことはなかった。

ここのビールはスーパードライの小瓶のみ。
なぜか1本300円とずいぶん安い。
メニューを眺めて迷った。
第一感はひらめムニエル(1500円)。
近年は洋食屋からすっかり姿を消した絶滅危惧種のひらめ。
遠い昔、どこでも目にしたひらめのフライとムニエル。
出世魚でもないのに今や最高級魚種に出世したからなァ。

シーフードフライの2種ミックスにも惹かれた。
単品だと海老が1700円で鯛とホタテがそれぞれ1500円。
上記3品から2つ択べるミックスは一律1500円になる。
一見して海老を含むミックスがお食べ得と知れる。
たべともの1人に海老フライ・フリークがいるが
J.C.は海老フライにほとんど魅力を感じない。

さすれば、ひらムニor 鯛・ホタテのミックスしかない。
悩むこと数分、珍しい鯛フライを試したい気持ちも手伝って
ミックスフライに決める。
ビールを飲むし、このあともう1軒、
つぶしておきたい未訪店があるため、半ライスでお願いした。

小瓶のビールなど、すぐに飲み干してしまう。
それこそキリがないから、少し間を置いてオーダーする。
右隣りに座ったリーマン風のハンバーグがとどいた。
鉄板上の熱々に素早くナイフを入れている。

ここで心づいたことに椅子と椅子の間隔がずいぶん狭い。
フォークを持つリーマンの左肘が
ときどきこちらの右手に当たる。
「おい、おい、そんなに肩肘張るなヨ」とも言えんしなァ。

2席続きで空いていた左隣りにカップルが着いた。
親子ほど歳が離れているが親子ではない。
娘の声が高く大きいから
聞き耳など立てなくとも会話の内容は筒抜け。

はは~ん、これはホステスと客だネ。
それも銀座の高級クラブとかじゃなくて
もうちっと場末のキャバクラじゃないかな?
とは思ったものの、
キャバクラには行ったことがないから定かではない。

シーフードフライ・ミックスが運ばれ来た。
おう、おう、プレート上で鯛とホタテが舞い踊ってるぜ。
中サイズの鯛が1切れ、かなりデカいホタテは3個と、
こりゃ、けっこう食べ応えがありそうだ。

=つづく=