2019年6月7日金曜日

第2149話 ここは「関やど」松戸のそば屋 (その2)

実に実に、きっかり10年ぶりの「関やど」。
相方は3年前に来ているという。
(お主もなかなかやるものよのぉ)
腹のうちでつぶやいて店内を見回した。

おや? 
小上がりが椅子席に変わっちゃってるヨ。
厨房の位置も全然違う。
先代の女将の姿が見えず、
接客は当代の女将、おそらく店主の奥方だろう。
訊ねると、数年前にリノヴェイトしたとのこと。
訪れれば、あの小上がりでくつろぐのが常だった。
この日もそのつもりでいただけに、ちと残念。

ビールはキリンラガーのみにつき、大瓶1本を分け合う。
突き出しは今も変わらぬそば味噌だ。
つまみは、あい焼き(合鴨&長ねぎ)とにしん棒煮。
それぞれの好みを1品づつ通す。
はたしてどちらも水準に達していた。

菊正宗の樽酒に切り替えた。
自宅の冷蔵庫には1合入りのワンカップが2、3個、
ビールの隣りで眠っているにも関わらず。
近頃は樽酒を注文する機会が増えた。
ハマるというほどではないにせよ、あの杉の香りが好きだ。

天種を追加する。
俗にいうかき揚げは芝海老と小柱の二者択一。
ここは一番、小柱を選択した。
小柱は青柳(バカ貝)の貝柱のこと。
帆立の柱を小分けにして代用する店を見受けるが
味はともかく、見た目はちょいとばかり無粋な印象。
小柱のほうがずっと粋である。

合鴨・にしん・小柱の三本柱のおかげで樽酒が進みに進む。
池波正太郎翁が大見得を切った、
「酒を飲まぬくらいなら、そば屋には入らぬ」―
けだし名言なり。

酒が飲めない人は可哀相、なんて言葉をよく耳にするが
ご本人たちはちっとも哀しくなんかないのであって、
むしろ、大きなお世話と、
苦々しい思いをされているんだろう。

でもネ、言い出しっぺが誰だか知らんけど、
とある都々逸が脳裏をよぎるんですワ。

酒も煙草も女もやらず 百まで生きた馬鹿がいる

まっ、賛否ございやしょうが、実に言い得て妙ざんす。

せいろ、おかめそばを一つづつ取って締めとした。
さあ、これからお向かいに移動の巻である。

「関やど」
 千葉県松戸市本町7-2
 047-361-0235