2019年6月19日水曜日

第2157話 焼いて食えるな ホロホロ鳥は (その6)

そうしてこうして
いよいよ、ホロホロ鳥が3皿ド~ンと卓上に—。
ここで思い当ることがあった。

この家禽(もはや野鳥ではない)を
最後に食べたのは仏料理店だろうが
いつ、どこでだったかトンと覚えていない。
しかし、初めて食したときのことは鮮明に記憶している。

ときは1975年、店は有楽町のふぐ料理屋「大雅」だ。
この年の8月末、英国・ロンドンから帰朝したJ.C.、
9月半ばには早くも職に就き、
人生最初のサラリーマンとして
毎朝、タイを締める身分となった。

勤務先が有楽町だったため、たびたび「大雅」を利用したが
ここにホロホロ鳥が居たのだった。
タタキや唐揚げのランチが500円ほどだったかな?
値段はよく覚えちゃいない。

残念ながらすでに閉業した様子で
在った場所にはモダンな高級ホテルが建っている。
ためしに電話してみたら
「この電話は現在使われておりません」―
移転営業もしてないんだネ。

それはそれとして「NOBI」のファラオーナ(ファラオの鳥)。
1羽丸ごとのローストではなく、もも肉と聞いていたので
コンフィを想像していたら、案の定だった。
1人当たり半本だけど、いろいろ食べ継いだからじゅうぶんだ。

ナイフを入れると、ホロホロ鳥だけにホロホロと崩れた。
まっ、鴨にせよ鶏にせよ鵞鳥(ガチョウ)にせよ、
コンフィにすれば、ファイバーが立ってホロホロになるんだがネ。
コンフィはいわゆる脂焼き。
低温でじっくり熱を通して調理する。
仏語のコンフィル(保存する)に由来する名称の通りに
長期保存が利く料理だ。
コンフィテュール(ジャム)もここから来ている。

肝心のお味はというと、これはこれで美味しいものの、
別段、コンフィにホロホロ鳥を使わなくても・・・
そんな印象だった。
言われなければ、誰もが鶏肉と思うだろう。
やはりホロホロ鳥はローストやフリカッセ。
食材の個性が発揮され、より美味となろう。
変化球で参鶏湯なんか、いいかもしれない。

通常、このあとドルチェとエスプレッソ、
あるいは食後酒に移行するところながら
スイーツ好きの女性陣ですら、それを求める声を上げない。
まったくもって、野郎どもみたいな女郎衆である。
会計は1人1万円と少々、お値打ちといえましょう。

夜はまだ浅い。
今宵のメンバーはみんな歌好き。
なかにはアンチエイジングの一手段として
カラオケを愛好する者までいるくらいだ。
歩いて1分足らず、行きつけのスナックに移動する。
大人数での到来に、ママがビックラこいていたわいな。

=おしまい=

「NOBI」
 東京都文京区千駄木3-42-8
 03-5834-7654