2019年6月3日月曜日

第2145話 幻魚はやはりマボロシだった (その3)

サカナのデパート「吉池」でY美嬢とフィッシュ・ショッピング。
先ほどの食事中、
相談を受けながら決めた彼女の今宵の献立は

白身魚のカルパッチョ
海の幸のフリット・ミスト(ミックスフライ)
リングイネ・ヴォンゴレ・ロッソ
白身魚のアクア・パッツァ
(ドルチェは省く)

というもの。
ディナーの主賓は旦那の母上、
姑(しゅうとめ)にほかならない。
こりゃ、ハズせんわな。
何でも敵は肉類がイケないそうで
サカナ一色にならざるをえなかったという。

J.C.の提案により、主菜のアクア・パッツァを
広東料理の清蒸鮮魚に変更した。
還暦超えの日本女性に
イタリアンづくしは重かろうと推測し、
なおかつ、締めには白飯が無難と考えたわけだ。
清蒸の残ったソースはご飯にピッタンコだからネ。

結局、Y美嬢が購入したのは
平目・槍いか・真だこ・小海老・小はまぐり・あずきはた。
こちらとしては彼女の健闘による、
調理の成功を祈るほかはない。

翌日、届いたメールには大成功とあった。
とりわけ、あずきはたの清蒸が好評だったとのこと。
めでたし。

後日、再びJR御徒町駅改札を出る、
J.C.の姿を見ることができた。
狙いは幻魚・ゲンゲである。
どうにも気になって捨ておくこと能わず。
リベンジに及んだ次第なり。

時刻は16時ちょい前。
「吉池食堂」の晩酌メニューが始まる16時半には
まだ若干の余裕があった。
さすれば、向かうは吉池直営の「味の笛」以外にない。

幸いにも2階の椅子席を無事確保。
さっそく工場直送、スーパードライの生をプラコップで—。
あれれ、いつの間にか250円が
280円に値上がってるじゃないか!
いいでしょう、いいいでしょう、
そもそも250円が安過ぎなんだヨ。
J.C.は許す、赦す、笑ってユルす。

一気に1杯飲み干して、つまみ類並ぶカウンターに戻る。
手に取ったのは越後松之山産わらびのおひたしだった。

=つづく=