2019年6月11日火曜日

第2151話 「な兵衛」は「なへい」に非ず (その2)

千葉県松戸市・本町の居酒屋、というか、
郷土料理店の趣き漂う「な兵衛」。
そのカウンターで越後のっぺを味わっている。
店内にはゆるゆると時が流れていた。
かなり昔のことながら
豊島区・池袋の新潟料理屋で
のっぺを肴に酒を飲んだ記憶がある。

そういえば、はるか40年前、佐渡へ渡る際、
新潟港に近い料理屋で食した、のっぺを思い出す。
これがのっぺとの初めての出会いで
赤ひげの塩辛とわっぱ飯もいただいた。

赤ひげは南蛮海老(甘海老)だが
普段、われわれが食する甘海老とは異なるようだ。
正しくはアキアミといい、
オキアミのようにアミの一種ではなく、
桜海老に近い、れっきとした海老の仲間である。

海老団子が運ばれた。
やや大きめの団子に獅子唐、そしてレモン。
別添えでケチャップ主体のソースも。
熱いところをハフハフといけば、
店の名物だけにまずまずの仕上がりだった。

ただし、これにはレモンだけでじゅうぶん。
ソースを使うと、たこ焼き風の下世話な味わいになる。
まっ、たこ焼きも嫌いではないし、
舌先に変化が生まれて楽しいかもしれない。

燗酒に移行した。
訊きそびれたので銘柄は判らない。
たぶん新潟の普及品らしいがインパクトに乏しい。

品書きを再度、吟味していると、
先刻「関やど」の締めに食べたそばが
ボディブローのように効いてきた。
血糖の回った脳から胃へ指令の到達。
さらなる食物の摂取を控えよ!

店主の仕事ぶりは拝見したたものの、
常連の応対に忙しく、とても言葉など掛けられない。
会計時、女将サンに確かめてみた。
「お店の名前は”なへい”さんですか?」
「いいえ、正しくは”なひょうえ”なんですヨ」

いや、この違いは実に大きい。
武士がエラいわけじゃないが
”なひょうえ”と”なへい”では
響きに武士と町人ほどの差が出てしまう。
もともと兵衛は武官のこと、酒場で兵衛とはネ。
いずれにせよ、松戸に来たらもう一度、
じっくり飲み直してみたい佳店でありました。

「な兵衛」
 千葉県松戸市本町3-10
 047-362-3400