2019年6月25日火曜日

第2161話 雨の綾瀬は踏んだり蹴ったり (その2)

東京メトロ千代田線とJR常磐線が連結する綾瀬駅。
改札脇の焼き鳥屋の前で迷っている。
入るべきか、入らぬべきか、それが問題だった。
時刻はまだ15時にならない。
こんな時間に開いてる店はチェーン店以外にない。
お天道様も出てないし、
ここは一つ、御法度の裏街道を歩いてみるか?

と、思ったものの、最後の最後で踏みとどまった。
空腹を抱えながらも先に買い物を済ませて
真っ当な店が開くのを待とう。
そう、それが正しい選択肢だヨ。

歩いて1分、イトーヨーカドーに入館。
何度か利用していても地下の食品フロアばかりで
アパレル関係がまとめて入居する1階は初めてだ。
目当てのスポットが見つからないため、
女店員に訊ねると
「~~はございますがレディースのみで
 メンズのお取り扱いはございません」―だと。
それはないぜ、セニョリータ!
何のために綾瀬くんだりまで来たと思ってんのヨ。

まっ、彼女に罪があるじゃなし、
潔くあきらめるほかに術(すべ)はない。
ランチ難民がショッピング難民ともなり、
一人二役を演ずる破目に陥った。

このままボ~ッと、灯ともし頃を待つのはあまりに無策。
いっそのこと、隣り町の北千住に移動するか―。
あいや待て待て、
せっかく遠征した(そんなに遠くはないけど)綾瀬じゃないか、
何の成果もなく、どうして手ぶらで帰れよう。
わらにすがるのは不本意なれど、
たとえ転んでも何か拾って立ち上がろう。

まなじりを決したJ.C.、篠突く雨に真っ向勝負。
ハハ、われながらバカだねェ。
イヤになっちゃうヨ、まったく。
線路の北側を西の端まで歩いてみても収穫はゼロ。
高架下の飲み屋街にしたって
開いてるのはラーメン店や回転寿司だけ。
あ~あ、ダメだ、こりゃ。

ガードを潜って再び駅の南側へ。
すると帯広名物の豚丼屋を発見。
だけどサ、小サイズでも豚肉5枚乗せだ。
第一、こんな時間に肉満載のどんぶりめしを
食らったひにゃ、晩酌が不味くなること必至。
ここはパス、パス。

おっと、豚丼屋の隣りに居酒屋があった。
通りからちょいと奥まっており、
店内の様子をうかがえないが
どういうセンスか、屋号が「かあちゃん」と来たもんだ。
とても利用する気にゃ、なれんわな。

=つづく=