2019年11月6日水曜日

第2257話 長唄を聴きながら・・・

日記帳とミルキーをぶら下げて銀座の街を歩いている。
場外馬券売り場の前を通り過ぎた。
おおっと、懐かしの中華そば屋が復活してるじゃないのっ。
以前は何度も利用した「共楽」である。
時刻は10時58分、並びは5~6人、
中には競馬新聞に没頭している輩も―。

今日の昼めしはこれも中華そばの老舗「萬福」と決めている。
瞬間「共楽」に浮気しかかったが、ここは初心貫徹。
「萬福」、「共楽」、加えて今は無き「味助」。
ある時期、これが東銀座の三大中華そば屋であった。 

「萬福」の店先にやって来たものの、暖簾が出ていない。
おかしいな、11時開店のハズだがなァ。
ガラケーを確かめると、すでに11時5分過ぎである。
このまま延々と待たされちゃたまらんし、
予定に支障も来たすので店に電話してみた。

「もしもし『萬福』です」
「お店は何時にオープンですか?」
「えっ、ええ~、11時です」
「もう11時過ぎてるでしょ?」
「あっ、ああ~、ダイジョブ、ダイジョブ!」
「ダイジョブって今、店先にいるんだけど―」
「あっ、開けます、開けます!」

次郎さんの「飛びます、飛びます!」じゃあるまいし、
こんな杜撰な店じゃなかったハズだがなァ。
扉を開けたオッサンの顔を見て思い出した。
そうだこの人、10年以上もここにいる向こうの人だ。

すぐできるつまみを問うと、メンマとの応え。
一緒に赤星の中瓶を通したら意味が通じなかった。
あらためてサッポロラガーと言い直す。
このとき鳴り出したBGMが何と長唄。
歌舞伎座の裏手だから、まっ、こういうこともあろうヨ。

厨房に店主が現れた。
つまみのメンマはチンで温まっている。
素材の良さは判るものの、醤油の味付けがしょっぱくて
どうにもならず、お手上げ状態である。
今回はポークライスでいくつもりでいたが
前回(2008年1月)も食べた記憶がよみがえり、
未食の焼きめしにマインド・チェンジした矢先だ。

焼きめしは香ばしい醤油味がウリとメニューにある。
とても醤油味を重ねる気になれない。
かといって中華そばやワンタンメンではメンマがかぶる。
苦肉の策で当店唯一の塩味スープ麺、タンメンに緊急避難

中細ちぢれ麺は舌ざわりツルリの歯ざわりモッチリ。
やさしいタッチのスープに浮かぶのは
細切り焼き豚、玉ねぎ、もやし、白菜、にんじん、ニラ。
途中から大量に残ったメンマを投入して
メンマラーメンならぬ、メンマタンメンに仕立ててみたが
塩分が抜けたぶん、スープが黒く濁っちゃったヨ。
すべては余計なつまみのせい。
久々の「萬福」も不完全燃焼に終わるのでした。

「萬福」
 東京都中央区銀座2-13-13
 03-3541-7210