2019年11月26日火曜日

第2271話 そば屋は昭和27年生まれ (その1)

厨房用品専門店が軒を連ねる合羽橋道具街。
昨今はかっぱ橋道具街通りというのが
台東区認定の正式名称らしい。
いずれにしろ、ここは合羽橋であって河童橋ではない。

ほかにもうひとつ、かっぱ橋本通りがある。
浅草の国際通りから上野の昭和通りまで
東西に走る道筋は途中、道具街と直角に交わる。
ニューヨークのマンハッタンに倣えば、
アヴェニューの道具街、ストリートの本通りとなる。

本通りには通称・かっぱ寺と呼ばれる曹源寺があり、
こちらは河童に由来する。
よって本通りを河童橋本通りと綴っても
あながち間違いとは言えない。

雨合羽商の合羽川太郎と
彼が助けた河童の挿話が残っているので
興味ある方はググッてみてくだされ。
ちなみに本通りでは毎年、
下町七夕まつりが開催され、多くの人が訪れる。

その日、キッチン関連の買い物のため、
道具街に寄ったあと、本通りに入った。
ランチの予定は松が谷の町中華。
3丁目の「大精軒」か、4丁目の「明華」。
気分は前者のワンタンメンだった。

到着したら「大精軒」は定休日。
「明華」に回れば済むことなれど
それでは浅草方面へ戻ることになる。
できれば進行方向の上野に進みたい。
戦場で死ぬときに前のめりで死にたいとは思わぬが
退くよりも進むほうが性に合っている。

本通りをそのまんま東ならぬ、西へ。
かっぱ寺・曹源寺の手前で
「松月庵」なる日本そば屋をみとめた。
通いなれた道筋につき、存在は認知していたものの、
どこにでもある町そば屋然とした店構え。
別段、気にとめていなかったのだ。

しかし、此度は店頭に掲示された1枚の写真に注目。
「松月庵」の全貌が収められ、
創業昭和27年との書き込みもあった。
撮影は2年後の昭和29年である。
先日の「SWING」は同い年で、こちらは一つ年下。
同世代に親近感を覚えるのは致し方ない。
しかも写真は懐旧の念、刺激するにじゅうぶん。
逡巡する間もあらばこそ、
青地に白の暖簾を両手の甲で分けていた。

=つづく=