2019年11月29日金曜日

第2274話 モウカの星 (その1)

一週間ほど前のこと。
近所のスーパーを除けば、
最も立ち現れる機会の多い食材調達先、
「吉池」の鮮魚売り場で獲物の物色に励んでいた。

以前は湯島及び、小石川に
それぞれ本店(経営者が兄弟同士)を構える、
「丸赤」のデパ地下出店(でみせ)をよく利用したが
とにかく高価に過ぎてバカバカしくなった。

本まぐろの赤身刺しが1人前2000円、
柳かれいの一夜干しが1枚3000円では
エンゲル係数のコントロールなど夢のまた夢、
到底かなうものではない。

おまけに大西洋ならぬ、八王子のハニューダ諸島が
身の丈に合った食生活を送れ!
なんて言い出すもんだから、たとえアホの戯言でも
食いモンに関しては一理ありと従った次第。
だけど、今度どっかであの肥満体を見かけたら
斫(はつ)ってやろうと企んでいるんだ。

さて、その日一番の収穫はモウカの星であった。
モウカの星? ほとんどの読者が何だソレ?
首を傾げたことであろう。
言っちゃあなんだが
モウカの星は巨人の星と縁もゆかりもない。
モウカというのはモウカザメ、名ネズミザメだが
真鱶鮫からきているらしく、星はその心臓なのだ。
煮ても焼いても食えない、無理に食ったら即、
食中毒の安倍シンゾウとは真逆でコイツは美味い。

それがワンパック500円で売られていた。
量が少ないからかなりの高級品だ
にもかかわらず、美しい深紅の輝きに魅せられて
放り込んだマイ・バスケットである。

一口サイズにスライスされており、
あとは薬味の用意をすればよい。
いろいろと試してみた。
基本は生醤油だが、合わせた薬味は以下の通り。
天城産本わさび、スライスにんにく、おろしにんにく、
おろししょうが、コールマンのマスタード、
SBのチューブからし、SBのチューブホースラディッシュ、
そして胡麻油&ヒマラヤのピンク岩塩。

よかったのは、おろしにんにく醤油と胡麻油&岩塩だった。
人はレバ刺しに似ているというが
レバは肝臓、星は心臓、弾力がまったく異なる。
天下の珍味と言えなくもなく、
河岸でも酒場でも見かけたら試食をオススメしたい。

=つづく=