2020年4月3日金曜日

第2364話 二羽を追うものは一羽をも得ず (その1)

この日の昼の散歩は台東区の蔵前、鳥越方面。
元浅草を抜け、下谷神社の裏手に差し掛かって
見覚えのある焼き鳥店に遭遇した。
ずいぶん前に何度か利用した記憶がある。

例によって帰宅後、チェックしてみたら
2008年と翌年に一度づつ、どちらも夜の訪れ。
再訪したくらいだから、それなりに気に染まったらしい。
店先の立て看板によると、ランチメニューは4種類。

特選焼とり丼―850円
特選そぼろ丼―800円
特製とろとろ鳥煮込み定食―800円
特製鳥スープ茶漬け―750円

手頃な価格設定である。
時刻は13時をちょいと回ったところ。
ガラス戸越しに中をのぞくと、
ピークを過ぎたせいかガラガラだった。

トゥデイズ・ランチにイメージしていたのは
御徒町の町中華か湯島のカレーショップ。
ふ~む、昼の焼き鳥も悪くないな・・・よおし、決めた。
引き戸を引いてお運びの女性の指示に従い、
L字形カウンターの底辺に着いた。

焼とり丼でいくつもりだったが
いざ注文の段となると少々迷う。
鳥そぼろは好まぬというより、むしろ嫌い。
茶漬けもあまり好きじゃないし、
ましてや昼めしに茶漬けはないやろ。
こんなん昼から食うヤツは高見盛と遠藤くらいのもんだ。

消去法で焼とり丼と鳥煮込み定食が残った。
迷いは少々でなく、次第に大きくなってくる。
既訪とはいえ、ランチは初めてだし、
鳥煮込みの変化球より、
焼とり丼のストレートで真っ向勝負を選択。

L字の底辺にだから中の様子がよく見える。
店主が準備にかかった。
取りい出したる鳥もも肉に鉄串を3本打っている。
備長炭で焼かれることおよそ10分。
配された膳には焼とり丼のほか、
鳥がらスープ、ぬか漬け(きゅうり・大根・にんじん)、
グリーンカール主体のサラダ。
サラダには和風の胡麻ドレッシングがかかっている。
おや? 
首を傾げたのは主役のどんぶりに対してだった。

=つづく=