2020年4月20日月曜日

第2375話 拘置所前に降り立った (その2)

出前帰りのオジさんのあとを
追うように入店した「そば新」。
接客のオバちゃんに四人掛けの卓を促されて
着席すると消毒用アルコールが運ばれる。
使ってみたらなんだかベタつく。
ラベルを確かめるとハンドジェルだった。
へえ~、近頃はジェルでっか。

常連らしきオッサンがキリンの大瓶を飲んでいる。
サッポロかアサヒなら楽勝だが
昼からキリンの大瓶はちとシンドい。
「ビールの小瓶あります?」
「お客さんが飲んだ気しないって言うんで大瓶なんです」
「銘柄はキリンだけ?」
「そうなんです」
「じゃ、それを―」
ビールのお供にきゅうりぬか漬けとたくあんの小皿が―。

つまみメニューは、おでん、もつ煮込みの2種のみ。
どちらにも食指が動かない。
こんなときはおかめそばである。
温かいそばの上に色とりどりの具材を並べ、
おかめの顔に見立てたのがおかめそば。
さして美味くはなくとも、おかめの顔が肴になるのだ。

どんぶりを持ち上げ、まずはそばをやっつける。
箸の上げ下げに伴い、おかめの顔は崩れに崩れ、
何かワケあってその夜帰宅できずに翌朝、
そのまま出社に及んだ化粧のノリ最悪なOLの如し。

とは言え、そばを手繰り終えたら
おかめそばがおかめ抜きに変身。
そば屋の抜きは好きなのに、昨今は提供する店が激減。
明治は、いえ、いえ、昭和は遠くなりにけり。

どんぶりの顔は厚めのかまぼこ3枚が幅を利かせ、
あとは、ナルト、油揚げ、伊達巻き、鶏肉、小松菜、麩。
気取った高級店ならこれに加えて
湯葉、竹の子、椎茸あたりがドヤ顔で浮かぶハズだ。

切盛りは夫婦二世代、計四人の様子。
釜場に老夫婦、娘夫婦は娘が接客、旦那は出前と調理補佐。
揃って楽しそうにその職責をはたしている。

庶民的な店の品書きをザッと紹介しておこう。
もり・かけ・中華もり各450円、
たぬき・きつね・中華そば各520円
千円以上は、天ざる1000円、
鍋焼きうどん・並天丼各1100円、
上天丼・うな重各1600円。
1600円のうな重はいったいどんなのが出て来るのだろう。

滞空45分で1310円を支払い、まぶし過ぎる表に出た。

「そば新」
 東京都足立区足立2-22-5
 03-3889-3194