2020年4月16日木曜日

第2373話 鮨の命は酢めしに宿る (その2)

北区・十条では圧倒的な人気を誇る、
「かわなみ鮨」のつけ台に独り。
にぎりは2カンづつの提供につき、
4種、計8カンをいただいたところである。

ビールはもうじゅうぶんなので芋焼酎に移行する。
一升瓶が目にとまった黒霧を
ロックで所望すると同時に
最近よくラジオで耳にする、
当商品のCMソングが頭の中で鳴り出した。

♪ くろっきり くろっきり もうくろっきりですか ♪

何のこたあない、
山口百恵の「横須賀ストーリー」の替え歌だ。
1976年6月のリリースだから、はるか44年前。
よくこんな古い曲を今さら、という印象だが
黒霧はわりと新しい焼酎だからネ。

「横須賀ストーリー」は百恵ナンバーのマイ・ベスト。
セカンド・ベストの
「パールカラーにゆれて」も同年のリリース。
しかしこの年は何といっても
子門正人の「およげ!たいやきくん」。
日本全国津々浦々、朝から晩までこの歌が流れていた。
「横須賀・・・」も65万枚とよく売れたが
「たいやきくん」は驚きの450万枚だもんネ。

それはそれとして「かわなみ鮨」のくろっきりロックは
デカめのグラスにあふれんばかり、危険がいっぱいだ。
作ったのは姉妹(?)の妹のほうだが
虫も殺さぬ可愛い顔して大胆なマネをするもんだ。

にぎりシリーズに一息入れ、つまみを一品お願いした。
蛍いかの酢味噌和えである。
プックリと肥えて富山湾産の上物であることが一目瞭然。
菜花の彩りもよろしく、これが不味い道理がない。
それにしてもくろっきりは飲み応えがあるわい。

にぎりに戻って穴子。
ふっくらと柔らかな仕上がりはそれなり。
惜しむらくは現代風のあっさりとした煮つめが
江戸前鮨の昔を知る者にもの足りなさを残す。

最後のかつおはニンニクがないため、
しょうがなく、しょうがでやってこれまたそれなり。
やはりにぎり鮨の命は酢に尽きる。
小肌、さばを生かすも殺すも酢次第だ。
結局、一番よかったのは漬けしょうが。
新しょうが使用のこれだけはキリッと酢が立っていた。

勘定は4300円と良心的。
地元で愛される理由がここにあろう。
それはそうと帰り道、十条駅の階段で一瞬、
フラッとよろけたのは、くろっきりが悪さしたんだヨ。
そのまま転げ落ちたら
もうそれっきりだったかもしれやせん。

「かわなみ鮨」
 東京都北区上十条2-22-10
 03-3907-4888