2020年4月29日水曜日

第2382話 旧東海道をゆく (その4)

鈴ヶ森刑場跡をあとに、なおも南へ。
旧東海道はここから美原通りの別称でも呼ばれる。
小学生時代、J.C.の家族はこの通りから
ちょいと入った横丁に暮らしていた。

使いに走らされる店々も、家族で観る映画館も
親父に連行されるパチンコ屋も、みな美原通り商店街。
思い出が詰まりに詰まったストリートなのだ。

美原通り北はほどなく環七にぶつかり、
この先、美原通り南となるが
本日はここで旧東海道の独り道中を終えた。
品川から一直線に歩けば、1時間少々の道のりだが
平行して走る京浜急行の駅周りを徘徊するため、
昼めし休憩を差し引いても3時間半は歩いた。

きびすを返して向かったのはJR京浜東北線・大森駅。
地域の人気居酒屋は2軒3店。
うち1軒の「富士川」は自粛休業。
一方の「蔦八」はすぐ側の支店ともども時短営業。
方針はそれぞれながら、自粛する店が圧倒的に多い。

これまた、あらかじめ営業を確認済みの「喜楽」へ。
大森最古の町中華がここ。
初めて訪れたのは驚くなかれ、60年前の1960年。
母親と二人でラーメンをすすった。
長いこと、もやしそばだと思い込んでいたが
ラーメンと気づいたのはずっとあと。
「喜楽」のラーメンはもやし入りなのだ。
今は無き「喜楽飯店」の流れを汲む、
渋谷「喜楽」、大井町「永楽」も、もやしを踏襲している。

懐旧に心揺れながらスーパードライをトクトク。
一気に飲み干してさらにトクトク。
一拍置いたところで、きゅうりをポリッ。
お通しがきゅうりと大根のぬか漬けだった。
そうして焼き餃子を通すと、
やや大きめの6カン付けはごくフツーの美味しさ

紹興酒に切り替える。
塔牌花彫陳五年を常温で1合。
同時に腸詰を注文すると、これが花マルの大当たり。
軽く熱を通した腸詰もけっこうながら
芯を抜いて薄くそぎ切りにした長ねぎとのコンビが絶妙だ。

辛味噌が添えられたが練り辛子も欲しくなる。
でも、店主の目指す方向を修正するようで
言い出すことができなかった。

懐かしのラーメンを彩るのは
もも肉チャーシュー、味玉半個に加え、
当店の二大特徴、もやし&焦がしねぎ。
個性的な醤油スープにほぼ真っ直ぐの中太麺。
周囲を見ていると、客のほとんどがラーメンで締めている。

感心したのは全卓に完備されたティッシュボックス。
箱が空になると、すかさずオネエさんが差し替える。
需給の逼迫はすでに解消されたとはいえ、エラいねェ。
ローマ五輪の年からずっと、
大森はいい町で「喜楽」はいい店なのサ。

=おしまい=

「喜楽」
 東京都大田区大森北1-7-4
 03-3761-9659