2020年6月5日金曜日

第2409話 わさび八味はアイデア倒れ

コリアンタウンの町中華「すずき」にて
ビール&シューマイのあと帰宅を急いでも
愛猫が驚くだけだから、もう1軒立ち寄ろう。
近場は三河島か鶯谷、あるいは日暮里あたりだ。

狙いを定めずふらふら歩き、行き着いたのは
頭上を日暮里舎人ライナーが行き交う日暮里駅。
心当たりの「真面目焼鳥 助平」に向かった。
これは「すけべえ」じゃなくて「すけへい」ですヨ。

どこが真面目なのか判らんが「助平」は地域の人気店。
訪問時はまだ緊事宣が解除されておらず、
居酒屋には閑古鳥が鳴きまくっているのに
ここはいったい何なんだ! いつも大盛況である。

当夜もカウンターに客が鈴なり。
スゴスゴ引き下がろうとしたら
店長、いや、オーナーかな?
まだ若い、いわゆるアンちゃんに呼び止められて
座った入口そばの四人掛けテーブルであった。

「繁盛してるねェ!」
「ハイ、おかげさまで―」
黒ラベルの中ジョッキを通して注文した焼き鳥は
ふりそで・はらみ・ぼんぢり―塩
血肝・つくね―タレ
好物のはつもとはすでに売り切れていた。

卓上に珍しいものを見つけた。
静岡のメーカー「わかふじ」による、わさび八味だ。
あとで調べたら
唐辛子、陳皮、黒胡麻、あおさ、麻の実、花椒、
けしの実の七味唐辛子に、国産ワサビが加わって八味。
 
芋焼酎・三岳のロックに移行し、焼き鳥を味わう。
上々の焼き上がりだが塩は薄く、タレは濃くしょっぱい。
そこを差し引いても水準には達している。
印象に残ったのは中心部がレアのつくね。
やげん軟骨のコリコリ感がよいアクセントだ。

ただし、当店自慢のわさび八味が冴えない。
ちっとも焼き鳥に同調しない。
もともと唐辛子の辛味と山葵の辛味はまったくの別物。
前者は味蕾を、後者は鼻腔を刺激するものだ。
勝手に妙案と思い込み、製造に踏み切ったのだろう。

アイデア倒れの小さな缶を見つめて思った。
日本そばと山葵、七味の相性はよいが両方同時はない。
どんな味音痴も山葵に七味をブッカけるようなマネはすまい。
掛ける言葉が見つからないので取りあえず、ご愁傷さま。

「真面目焼鳥 助平」
 東京都荒川区西日暮里2-25-1
 03-5615-5140