2020年6月23日火曜日

第2421話 毛ガニを食ったんだガニ (その3)

 「三ぶん」で深海うなぎを楽しみながら
刺身の選択に余念がない。
おっと、千葉産のもんごいか、そのことであった。
主として西日本に揚がるモンゴイカは別名・カミナリイカ。
胴体の文様が雷に似ているためだがカミナリはイカズチ。
イカが重なるイカズチイカというわけには
イカなかったらしい。

鳥取産のめじまぐろにしようか―。
めじは本まぐろの幼魚。
夏場に日本海を泳ぐまぐろはアッサリとして美味。
バーテンダレスの手が空くのを待ちながら
手元の品書きを再チェックして妙なモノを見つけた。

山わさび和え(500円)って、いったい何なんだい?
いや、山わさびは判るヨ。
ローストビーフに必要不可欠で
英名・ホースラディッシュ、仏語ならレフォール。
北海道でよく使われ、道産の海産物と相性がよい。

しかしながら、これだけでは
何を山わさびで和えるのか見当がつかない。
問われた彼女、厨房に消えたが、すぐに戻って来て
まこがれいのヅケです」
ほ~う、いいじゃないか、お願いしましょう。

うなぎをお替わりして、まこの山わさ和えを味わう。
ヅケの深度が深いから醤油が勝って
繊細な白身の風味を損なうものの、
追いかける冷たいうなぎがカバーしてくれる。
この高級魚がワン・コインとはありがたや。

すると今度は蟹味噌(500円)に気づいた。
さっきの毛蟹サラダと一緒に頼み、
混ぜ込めばばよかったかもしれない。
遅ればせながら追加した。

ホンの数分で運ばれたカニの旨味のエッセンス。
「口の中で溶かしながら味わってください」
「エッ、どういうこと?」
見れば、蟹味噌は凍ってるじゃないか―。
鮭のルイベは何度か食べたが蟹味噌は初めてだ。

小皿にはパチンコ玉くらいの粒が7~8個。
1粒つまんで口に放り込む。
う~む、確カニ蟹味噌ではあるんだが・・・。
そのうち混入した殻が舌に残り出す。
味噌は溶けるが殻は溶けない。
何だかなァ・・・。

カニに関してはこのところずっと不完全燃焼気味。
しばらくカニを封印するしかないカニ?
今宵の収穫は深海うなぎとの出会いでありました。

=おしまい=

「立呑 三ぶん」
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