2020年6月22日月曜日

第2420話 毛ガニを食ったんだガニ (その2)

日比谷ミッドタウンの「三ぶん」で立ち飲んでいる。
昔ながらのアサヒ生をやっつけて思う。
やはり今の生のほうがずっと美味い。
昔のほうが良かったら
アサヒだって主力を元に戻すだろう。

例によってお粥が酒盃に1杯。
飲酒に先立つ胃袋への思いやりだが
あまりに量が少なく、ほとんど意味を成さない。

つまみは当店の名物、毛蟹サラダ(1000円)。
頂上に小さめの脚肉がペアでチョコンと載ってるものの、
甲羅に詰まったサラダはほとんど
玉子・きゅうり・にんじん・玉ねぎのマヨ和え。
毛ガニも混じってはいるがカニ感に乏しい。
それでもつい頼んでしまうのは
カニ好きが成せる悪癖というほかない。

焼酎のロックに切り替える。
リストにあった、うなぎは初めて目にした。
目の前で相手をしてくれているバーテンダレスは
酒を一滴も飲めないけれど、
「ワタシ、このラベルが可愛くて好きなんです」と言う。
なるほど手漉きの和紙に描かれたうなぎの図柄は
老舗うなぎ屋の袖看板よろしく、なかなかに素敵だ。

深海うなぎが正式名称の芋焼酎は
鹿児島県・志布志市の丸西酒造によるもの。
黄金千貫のかめ仕込みは
パンチがあるうえに奥行きも深く、一発で気に入った。
これがもしお見合いなら即刻、結納へとことが運ぶ。

ふと見やった卓上に
京都は原了郭の一味、粉山椒、黒七味が仲良く並んでいた。
「うなぎだけに山椒かけたほうがいいよネ?」―ささやくと、
彼女、固まってしばらく
「いえ、それはやらないほうが・・・」
「ハハハ、冗談、冗談、マイケル・ジョーダン!」
サンドの富澤じゃないが
ちょっと何言ってるか判らない様子でキョトン。
さもありなんて―。

うなぎに見合ったつまみを吟味する。
=魚は全て天然物です=
これ見よがしの貼り札に謳うくらいだから
サカナには自信があるに違いない。

壁のボードに記された、本日の刺身は
めじまぐろ(鳥取) すずき(島根)
もんごいか(千葉) まこがれい(外房)
の以上四種、ちなみにまこは昆布〆である。

ふ~む、千葉県にもんごが揚がるんだネ。
うなぎのロックを舌の上で転がしながら
首を傾げておりました。

=つづく=