2020年9月16日水曜日

第2482話 水運の戸口 水戸へ

今は昔、那珂川による”水運の戸口”として栄えたことを
名の由来とする水戸にやって来た。
駅北口から北西に延びる、黄門さん通りは尾根伝い。
馬の背のような道筋を歩いていった。

ほどなく目当ての「ミナミ食堂」に到着。
敗戦後まもなく開業した店舗の外装は
海老たちが踊るイラストのせいでレトロというよりキッチュ。
奇抜な意匠ながら店内はひなびた地方の食事処といった風だ。
年代物のショーウインドウに
持ち帰り用の赤飯・すし折・いなり・餅が並んでいる。

スーパードライの中瓶と一緒に
白胡麻を振りかけたシナチクが運ばれた。
サービスのお通しだが
なるほど、メニューにはつまみになりそうなものがないネ。
ビールと同時に通したラーメンは5分で着卓。
豚バラチャーシュー、再びシナチク、小さなナルトと海苔。
この景色は開業当初と変わらないのだろう。

ほぼ真っ直ぐの中細麺に特徴はない。
スープに期待した懐かしさを感じなかった。
節・干し系の出汁が前面に出て
昔の味と似つかずに意外な気がした。

昭和の雰囲気に身を置いた時間は30分足らず。
金1150円を支払うと、オヤジさんがくれたポイントカードに
こう明記されていた。

昆布は羅臼産、本節・サバ・カツオは薩摩産、
煮干しは近海物を使用しております。

日が暮れた街を徘徊するも、気に染まる店に出会えない。
コロナ禍のため、一見客を断る店も何軒か―。
こんな場合は駅ビル内の「常陸野ブルーイング」を
滑り止めと決めていたが、念のために
水戸東照宮脇の飲み屋街をチェックする。
やはり此処にも収穫はなく、駅へ戻った。

駅ビル エクセルみなみの4階に上がる。
窓際カウンターで夜景を眺めながら飲んだのは
ラガー・ホワイトエール・スウィートスタウト、
3種類のテイスティング・セット。
クラフトビールは滅多に飲まぬが
カラカラのノドには何でも美味い。
濃いチェリー色に甘みを蓄えたスタウトが印象に残った。

クラフトジンのソーダ割りに移行。
自粛で在庫を抱えた常陸野ネストビールと
困窮する飲食店から集めたビール計30000Lを
酒造の蒸留所でジンに代え、
各店に差し戻したと説明書きにあった。

山椒・ホップ・ジュニパーベリーのユニークな配合は
残念なことに雑味があり、キレ味にも欠けたが
ライムを搾って何とかなった。
大好きなライムは毎朝のように
搾りた立てをソーダで割って飲んでいる

フードは何も取らずに会計を済ませ、
そのまま帰りの電車に乗り込んだ。
かくも短き水戸の滞在でした。

「ミナミ食堂」
 茨城県水戸市南町2-4-56
 029-221-5726

「常陸野ブルーイング 水戸店」
 茨城県水戸市宮町1-7-31 水戸駅ビル エクセルみなみ4F
 029-306-7575