2020年9月23日水曜日

第2487話 念願かなって近江八幡 (その1)

J.C.は旅先で早寝を絶対にしないが早起きはいつもする。
この朝もそうだった。
気合を入れたというより、興奮してるんだネ、たぶん。
気象庁によれば、東海・近畿地方は大気不安定につき、
旅行中は連日雨の予報だが、とんでもハップン。
ほとんど快晴じゃないか―。

デスティネーションは琵琶湖畔の街々。
大津→近江八幡→彦根と廻って名古屋に帰着するつもり。
6時半に宿を発ち、大津着は9時半だった。
駅前のなだらかな坂道を下り切り、湖畔に立つ。
まばらながら釣り人、釣り船の姿を見ることができた。

このとき嗅覚がとらえたのは水の匂いだ。
海の磯の香とは似つかない、
かといって他の湖沼では嗅いだことのない匂い。
つい先日の手賀沼も無臭だった。
琵琶湖特有の匂いというほかはない。

散策する岸辺に一風変わった建物があった。
理由は判らぬが琵琶湖文化館は只今閉館中。
ブルース・リーの「燃えよドラゴン」に
出てきそうな中国風のスタイルが目を引いた。
 
1時間あまり市内をめぐり、近江八幡へ。
以前から訪れたいと思っていた八幡堀にまっしぐら。
叔父・秀吉に自死を強要された豊臣秀次が
開削させた水路は琵琶湖の水運の発展に寄与し、
近江商人の生みの親ともなった。
時代劇のロケ地としても有効利用されている。

堀端を離れ、観光客無き町並みをそぞろ歩く。
表通りには「西川」「久ぼ多屋」など、
近江牛の専門店が軒を連ねている。
なおも奥へ進んだところで「三松食料品店」に遭遇。
目を居抜いたのは”本日のおすすめ”、その一筆だ。
=びわマスのマリネ=
こいつは看過できんゾ。
 
古民家風の店先で屋号通りに惣菜の小売りをしながら
和洋折衷の応接間では実のある昼餉を提供している。
気がつけば13時を回っており、空腹感を覚えてもいた。
 
靴を脱いで案内されたのは、その応接間の窓際カウンター。
一息ついてビールの銘柄を訊ねると、
接客のお嬢さん、首を横に振りながら 
「お酒はございません」
マンマ・ミーア!それはないぜ、セニョリータ!
 
=つづく=