2020年9月29日火曜日

第2491話 うなぎ蒲焼きの分水嶺 (その2)

静岡西部の城下町、掛川の「甚八」で
うな重(竹)を待っている。
うなぎはそれなりの時間を要するため、
まずは通しておいて、ビールをお願いするがよい。
 
品書きを見て愕然、何とサントリーモルツの大瓶しかない。
日本酒やウイスキーもなく、本当にこれしかない。
色を失って接客の娘さんに確認するも事態に変化は生じず。
スッパリあきらめたら、緑茶が急須ごとサーヴされた。
掛川は県内有数の茶処である。
 
11時10分過ぎで客は6人と、さしたる混雑でもない。
15分に配膳された。
かなりの大きさの重箱にうなぎが1と4分の1尾。
飯の量も多く、持つ手のひらにズシリときた。
これなら(梅)でじゅうぶんだったヨ。
 
脇には糸三つ葉を浮かべた肝吸い。
香の物はたくあん3切れにタップリの白菜漬け。
うなぎにたくあんは無粋だなァと思いつつも
美味かったから黙認する。
活気が出てきた店内を見回すと、
ディスタンスを保ちながらほぼ満席で順番待ちが数組。
やはり人気店なんだネ。
 
さて、肝心のうなぎは関西風の腹開き。
焼きはというと、地焼きのハズだが
浅い蒸しが入っているのではないだろうか?
さもなくば、こんなにフックラ焼き上がるまい。
 
蒲焼きの東西の境い目は浜松辺りが定説なれど、
実際は掛川のような気がする。
浜松と掛川の間を天竜川が流れているが源流は諏訪湖。
彼の地でも下諏訪と上諏訪の間が境い目とされている。
 
うなぎ自体のタチはけっこうだ。
問題はタレにあって、いかんせん甘すぎる。
最後まで気になって仕方がなかった。
加えてキレ味に欠ける粉山椒がまったくの役立たず。
世の中うまくいかないねェ。
 
滞空45分で会計を済ませると、出入り口が騒がしい。
何となれば外はすごい雨、篠突く雨とはこのことで
食べ終わった客が出るに出られず、”密”になってるヨ。
このとき目に留まったのが玄関脇に貼り出された一筆。
 
うなぎのいきのよさがうりも ん またせるのがなんてん
おいしくたべてもらえたらまんぞく  = 店主独白=
 
ハハハ、なかなか達者な店主なれど、
この粋な御仁が何でたくあんを出すかネ。
 
前日の彦根の雨はシツッコかったが
今日のは激しいだけにすぐ止んだ。
掛川駅へと歩きながら、今宵はいずこで晩酌を?
3日続 けてランチ・ビールにありつけず、
我慢も限界間近でありました。
 
「うなぎの甚八」
 静岡県掛川市肴町7-12
 0537-22-5638