2020年9月28日月曜日

第2490話 うなぎ蒲焼きの分水嶺 (その1)

彦根から名古屋に戻り、
向かったのは前夜にフラッと立ち寄った「やまびこ」。
此処で2~3杯飲って
大須あたりへ流れようという腹積もりだ。
昨夜と同じカウンターの位置取りで黒ラベルの生。
いや、たまらん。
 
目をつけておいた三州・岡崎産のイノシシ肉を炙ってもらう。
生のお替わりに続き、ペルノーの水割りを—。
ようやく一息ついて知多のハイボールに切り替えた。
蓮根・冬瓜・パプリカ・ゴーヤを従えて
イノちゃんが焼き上がった。
ソースはバルサミコ、サイドに粒マスタード。
ナイフを入れると野性味は感じるものの、
硬い筋がそこかしこに残って、ところにより肉質不安定。
ジビエは個体差が激しいから仕方あるまい。
なぜか食前酒のシェリーが飲みたくなり、ティオ・ペペを—。
 
思いのほか長居をしてしまい、
今夜は此処だけでいいやという気分になってきた。
ならばとフジッリ・ゴルゴンゾーラを追加。
最後は再び生ビールに戻り、勘定は6千円ほどだった。
大浴場のあるホテルに投宿しながら
部屋のシャワーを浴びてベッドに潜り込む。
 
翌朝も早起きして帰路に着いた。
最初の途中下車は静岡県・掛川駅。
当地にも掛川城があり、
彦根城よりずっと与しやすいが遠望するにとどめる。
 
本日のランチ・ターゲットは「うなぎの甚八」。
人口のわりにうなぎ屋の多い掛川で
人気ナンバーワンを誇っているらしい。
 
開店は11時、その10分前に着くと
並びは中年女性二人組のみ。
ここで空からパラパラッときたが
すぐに暖簾が出たため、事なきを得る。
 
カウンターの一番奥に着き、
梅(2500円)竹(2800円)松(3200円)
上松(3800円)とあるうち、梅&肝焼きをお願いしたら
単品の肝焼きはござんせんとのこと。
 
肝焼きを得るには上松の、そのまた上の、
二段重(4500円)を注文するほかにすべはない。
これだと肝焼き・ボーンフライ・サラダが付き、
さらにはうなぎ本体が2人前になるそうだ。
 
要するにこのメニュー、単身者にとっては無用の長物。
お二人様専用だろうが夫婦や恋人同士ならともかく、
オッサン2人で段の上・下と1本の肝焼きを
分かち合うなんてのは気色悪いし、みみっちくもある。
 
ん? ちょいと待てヨ。
当世、流行りのおっさんずラブ。
ハハハ、その手があったか—。
便利な世の中になったもんだヨ、ジッサイ。
 
=つづく=
 
「Stan Dining  やまびこ」
 愛知県名古屋市中央区栄3-8-102
 052-262-4300