2024年8月7日水曜日

第3596話 珍しき哉 うなぎ居酒屋

日暮里の名所、夕焼けだんだんを降り、
谷中銀座を突っ切ると
Tの字でぶつかる谷中よみせ通り。
此処に昔からあるのが鰻屋「山ぎし」。
十数年前まで同じ屋号を
ちらほら見かけたものだが今は他に
旧白山通りの計2軒だけになった。

かつては穴子寿司で名高い、
谷中三崎坂「乃池」の真向かい、
朝日湯の隣りにあった。
穴子と鰻ががっぷり相対していたのだ。
「山ぎし」の店主に聞いた話では
他店はみな三崎坂からの暖簾分けとのこと。

友人から当店に関して情報が舞い込んだ。
「谷中の『山ぎし』って鰻屋さんご存じ?」
「12年前に1度だけ行ったけど
 印象が好くなくて、それから行ってない」
「先日、友だちが行ってスゴく好かったって」

ふ~む、近所だし久々に行ってみるかー。
お昼に訪れた。
あれェ、けっこう混んでるネ。
それに値付けがずいぶん安くなったような。
ちと意表を衝かれた思いがした。

何よりも目をくぎ付けにされたのは
壁にズラリ並んだ品書きだ。
ドライ大瓶を飲みつつ、つぶさに目を通す。
うざく・う巻き・うな肝佃煮・肝焼き・
鯉のあらい・鯉こく・柳川鍋・みがきにしん・
玉子焼き・焼き鳥・湯豆腐・月見とろろ、
はては鯉のあらいカルパッチョ水餃子まで
居酒屋も真っ青のラインナップである。

一番小さい鰻重松(1600円)を通したが
安いだけあってあまり感心しなかった。
鰻の定食がもっと安いので後日再訪。
ゆり定食(1300円)を注文。
鰻重松と同サイズの蒲焼きが付き、
小冷奴・煮ひじき・お新香・
わかめ吸い物の陣容である。
肝吸いがわかめになるから安いのか?

うなぎ居酒屋というのは極めて珍しい。
近所ということもあり、晩酌に訪れてみた。
ふきの煮びたしと肝の佃煮でドライの大瓶。
そして純米酒・尾瀬の雪どけを飲んだが
初めて目にする鯉のヒレ酒だけは
さすがに”飲指” が動きませんでした。

「山ぎし」
 東京都台東区谷中3-13-9
 03-3827-5763