2012年7月24日火曜日

第366話 日馬に振り回された場所

一作日の日曜日は夕方早くから
TVの前で大相撲名古屋場所の観戦。
29年ぶりの千秋楽全勝同士の対戦、
しかも史上初の横綱・大関による相星対決は
放映するNHKに3日も前からあおられていたものだ。

白鵬、日馬富士、両者ともに楽日まで
負けるハズがないというNHKの強気の予想は
見事に的中したことになる。
いや、ご立派。
ただ、横綱VS大関による史上初の全勝対決ってのは
あんまり意味がないように思う。
ずっと続いている一人横綱という特殊な状況が
たまたま生み出した珍現象だからネ。

千秋楽・結びの一番はご覧の通り、日馬富士の圧勝。
振り返ると、この勝敗の伏線は13日目にあった。
デカい魁聖を一気のノド輪で押し倒した日馬富士。
あの強さ・早さには瞠目した。
全盛時の千代の富士、朝青龍にもあんな豪快な勝ち方はない。
わが大相撲観戦史に大きな足跡を残す一番となった。

一方の白鵬は魁聖よりパワーのある把瑠都と
立会いからガップリ四つの長丁場。
浪費とは言わぬが、かなりのエネルギーを消耗する。
最後は把瑠都の力を利用しての投げが決まったものの、
あの相撲では疲れが残っちゃうよ。

従って決戦の大方の予想も過去の成績にとらわれず、
日馬富士有利の声が大きかった。
今場所の絶好調ぶりを度外視しても
白鵬は比較的相性のよい相手でもあるしネ。

今場所の日馬富士は一皮も二皮もむけて
大きな相撲を取れるようになった。
ケガさえなければ来場所で横綱昇進をスンナリ決めるだろう。
殊に印象に残ったのは左上手まわしを深めに取って
振り回し気味に相手を攻め立てる戦法。
把瑠都、琴欧州、白鵬、すべてコレで圧倒した。
スタイルは違うが元横綱の輪島にあやかって
”ニュー黄金の左”の誕生である。

まわしの深いところを取って振り回すのだから
浅めに取って送り出すように投げる出し投げとは異なるが
あの投げ技には新しい決まり手を与えてもいいのではないか。
まわしを振り回して投げるので”回し投げ”でいかがだろう。
いや、体操の技みたいに編み出した選手の名前をとって
”日馬投げ”が理想だけれど、これは協会が許さんだろうヨ。
取ったまわしの位置の深い順に
上手回し投げ、上手投げ、上手出し投げとすれば、
実際に取組みを観ていない者にも判りやすいハズだ。

ところで、千秋楽には思わぬ視聴者プレゼントがあった。
過去の楽日全勝対決をビデオで見せてくれたことである。
思わず身を乗り出したのは昭和35年春場所(大阪場所)、
栃錦VS若乃花(初代)の一番であった。
ちょうどよい機会なのでこの詳細はまた明日―。