2012年7月31日火曜日

第371話 天ぷらとかき氷 (その3)

けして食い合わせがよいとはいえない天ぷらとかき氷。
ランチタイムに両方やっつるのだからこれはチャレンジである。
まっ、腹をこわすこともないやろし・・・。

やって来たのは浅草・ひさご通りの「初音茶屋」。
東京一のお墨付きを与えたいかき氷がここにある。
久々の来訪なのに店の女将は
いろいろとよく覚えていてしばし談笑。
旧知の人間同士が久しぶりに会うと、
必ずといっていいほど3月11日の話題になる。
互いのその日を語り合い、あらためて無事を確認し合い、
ともにうなずき合って、ほかの話題に移行するのが常だ。

話の間もスプーンを動かさないと氷が溶けてしまう。
「初音茶屋」のかき氷はまるで今降ったばかりの新雪だ。
氷の花びらは味わうヒマもあらばこそ、
舌の上で瞬時に消えてなくなる。
氷のいのちは短くも 楽しきことのみ多かりき
なのである。

この日お願いしたのはシンプルな氷スイ。
砂糖のシロップだけの無色透明なヤツだ。
子どもの頃、スイは大人たちのもので
子どもが頼むものではないと思っていた。
無色だと美味しそうに見えないし、
赤いイチゴと緑のメロンのほうが魅力的に映った。
ソーメンだって1本か2本混じっている、
赤いのや緑のを狙って食べたものである。

一方の友人は氷ミルクを注文した。
ミルクといっても牛乳ではなく練乳で
いわゆるコンデンスミルクのこと。
スーパーの苺売場なんかに置いてある、
仔牛のロゴの練りチューブだネ。
ん? そんなこと誰でも知っておる! ってか?
はい、ハイ。

当日のわれわれは氷スイと氷ミルクだったが
実はこの店のイチ推しは氷コーヒー。
エスプレッソ以外はほとんどコーヒーを飲まないJ.C.が
ススめるくらいだから、だまされたと思って試してもらいたい。

もう1品はヨソではめったに見掛けぬ氷しるこ。
餡子につぶ餡とこし餡があるのはご存知だろう。
おしるこの場合、
つぶ餡が田舎じるこ、こし餡は御前じるこ。
それがかき氷となると、
つぶ餡が氷あずき、こし餡は氷しることなるのです。

世の中、あずきがしるこを圧倒しているが
J.C.は断然、氷しるこ派。
味わい繊細にして見た目にも気品が漂う。
もっとも甘党じゃないから
口にするのは多くても年に一度だけどネ。

=おしまい=

「初音茶屋」
 東京都台東区浅草2-23-3
 03-3844-7658