2012年8月30日木曜日

第393話 ひとりの大塚 (その2)

ことあるごとに何かというと
足が向いてしまう大塚にひとり来ている。
サア、どの店から攻略していくか。

初手は2年ぶりとなる「名匠 上木家」とした。
銀座のクラブで働いていた男の子二人が
独立して始めたたこやき店である。
屋号は彼ら上田・木村の苗字から一字ずつとった。 
缶ビールとたこ焼きを5つ、
窓の外を眺めながら楽しんだ。

お次は当ブログに何度か登場している「江戸一」。
大塚といえば真っ先に思い浮かぶのがここ。
案内した友人たちがみな歓んでくれるのもうれしい。
この手の酒亭では東京一、
いや、店名通りに江戸一であろう。

缶ビールを飲んできたから菊正宗の一合瓶を常温で。
めったに頼まない焼き魚のリストをもらい、
これもめったに頼まない生鮭の塩焼きをお願い。
生ならバタ焼きが一番だけれど、
「江戸一」にバタ焼きはないし、ただ漠然と注文していた。

お通しの塩豆、いや、塩は効いていないから
これは何と呼ぶのだろう、いわゆる豆まき用の豆を
つまみながら独酌にいそしむ。
小学三年生のときだったか、節分に食べ過ぎて以来、
見るのもイヤになっていたが、また食べられるようになった。

自著やコラムの読者にして
数年前からおつき合いのあるW辺サンが来店。
はす向かいに落ち着いたので会釈を交わす。
カウンター越しの会話みたいな無粋な真似は
風格漂う店の雰囲気をこわすからもちろんしない。

焼き上がった鮭を見てブッタマげた。
カップルで立ち向かってもよさそうなサイズに
大量の大根おろしが添えられている。
このおろしが実にありがたい。

やはりビールが飲み足りなかったようだ。
エビスの黒の小瓶を所望する。
それに続いたのは泉正宗のぬる燗。
つまみは鮭一品でじゅうぶんだった。
次回から独りのときはチョイ焼きたら子くらいにしておこう。

当夜の3軒目。
南口から北口に廻り、
以前から行こう行こうと、気に掛けていた「天平食堂」へ。
ドンブリものが人気らしいが、飯はもうとても入らない。
大きな鮭のあとでサカナに食指が動くはずもなく、
滋養と食物繊維を同時に摂取できるレバニラ炒めにした。
生ビールにもピッタリであろうし・・・。
ところが1皿500円のこのレバニラ、好みの味にはほど遠い。
こういう料理は大衆食堂より町の中華屋だよねェ。
早いとこ自宅に舞い戻ってキャベジンでも飲んどくか。


「名匠たこ焼き 上木家」
 東京都豊島区北大塚2-28-7
 03-3949-9368

「江戸一」
 東京都豊島区南大塚2-45-4
 03-3945-3032

「天平食堂」
 東京都豊島区北大塚1-34-13
 03-3917-5391