2013年11月8日金曜日

第704話 お米よ今夜もありがとう 古く良かりしニューヨーク Vol.7

久しぶりに”古く良かりしニューヨーク”シリーズをいきます。
読売アメリカの連載コラム、
J.C.オカザワの「れすとらんしったかぶり」から
抜粋してお届けする回顧版であります。

=お米よ今夜もありがとう==

まず、サブタイトルをご覧いただきたい。
そして、お米をおコメと読んでいただきたい。
これをおヨネと読むと太郎に嫁ぐアイちゃんの手を引く、
でしゃばり婆さんになってしまい、はなはだ不都合であります。

さて、去年からの日本国内の米騒動も落着した今日この頃、
われわれ在米邦人にとっても米抜きの食生活は考えられない。
炊き立てのごはんはもとより、
この時期の冷酒の晩酌は日本人の身に心にしみわたる。

グランドセントラル駅そばの和食店、「竹生」の酒は春鹿。
鹿児島から空輸されるスズキ、カンパチ、シマアジの刺身は
高級鮨店に負けず劣らずの旨さだ。
大根おろしで食べる大トロもたまらない。
色鮮やかな本玉の赤貝は鮨屋のそれを上回り、
ニューヨークNo1の折り紙をつけたい。
本わさびを使用する姿勢も高く評価したい。

自家製の蟹しゅうまいは
イタリアンのラヴィオリやアニョロッティを連想させて美味。
揚げものだけは改良の余地があり、
穴子の天ぷらなど穴子自体が大きすぎるきらいがある。
締めの食事は釜めしが一番人気。
関西割烹を謳う店だが、手羽先、天むす、きしめんに
店主のふるさと、名古屋の香りを偲ぶことができる。

セントラルパークに近い「麦」の酒は白鹿。
こちらはローカルのサカナを使っていても良質。
美味しい槍いかの刺身は通年食べられるし、
旬のカツオ、サバ、トコブシもすばらしい。

バーからキッチンまで取り仕切る店主は
ちょっと見、場末のバーテンダー風ながら
こと食べものに関しては目利きの鋭いものがある。
名物はシャケのカマ焼き。
スモークしたキングサーモンのカマは独特の味わいを誇り、
ビールにも日本酒にもピッタリでウォッカにも合うだろう。

肉じゃが、芋コロッケ、串カツも悪くない。
玉子とじはニラとシメジの2種類。
アサリも酒蒸しと鉄板焼きの2種類。
餃子は餡、皮、焼き加減、すべて完璧に近い。
ほとんどの客が支那そばで締めるが
小かぶのぬか漬けとアサリの味噌椀でやる茶碗めしは最高だ。

日本酒の代わりにビールを飲み、
白飯の代わりにきしめんや支那そばで仕上げた方は
最後にひとこと、こうつぶやいてください。
「お麦よ今夜もありがとう」

残念ながら2店ともすでに閉店してしまった。
振り返れば、帰らぬ昔がただ、ただ、なつかしい