2013年11月21日木曜日

第713話 よみがえった珈琲 (その4)

文京区・千駄木は団子坂下、
「やなか珈琲店」の店先で逡巡している。
都内に支店網を張り巡らせ、商売を拡げているのだから
さぞかし美味しいコーヒーを淹れるに相違ない。
いまだ入ったことのない店ながら
コーヒーのはしごくらいで何をためらうことがあろう。
居酒屋のはしごなら4軒、5軒と平気の平左なのに
たかだかキッチャ店2軒、ここは迷わずゴー・アヘッドだろうヨ。

でもって、ドアを押しました。
いや、引いたのかもしれやせん。
それにしてもコーヒーのはしごはわが半生に記憶がないゾ。
何でこうなったんだろか!

豆種もチェックせずに本日のコーヒー(230円)をお願い。
「モス」ではハンバーガー1つきりで
フライドポテトもオニオンリングも付けなかった。
日曜日の優雅な昼食にはいささかの不足があろう。
よってフードメニューに目を通すと、ホットサンドがあった。
ハムチーズとツナがあってともに240円、ずいぶん安いなァ。
ハムチーズを選択する。

1階にも飲食スペースがあったが
先客はトレイを持って2階に上がっていった。
ハイ、慣れない場所では先人の行動に習いましょう。
多少時間の掛かるホットサンドはあとでお席にお持ちしますとのこと。
コーヒーだけをトレイに乗せてアップステアーズである。

2階担当の女性スタッフに訊ねたら
本日のコーヒーはサントス・デカフェとの応え。
デカフェはカフェイン抜き、
ブラジル産サントスのカフェインレスということだ。
味わうと実にユニークな風味。
シナモンみたいな香りが立っている。
コーヒーに関しては何の薀蓄も持たないJ.C.、
ふ~ん、こんなものかいな、
一人ごちていると、ホットサンドがやって来た。

ほほう、こういうヤツだったのか。
鯛焼きを焼く鉄製の器具、それの四角い版、
いわゆるホットサンド・メーカーで焼かれたサンドイッチだ。
「モスバーガー」は十数年ぶりの訪問だが
このタイプのホットサンドに出くわすのは数十年ぶりである。

そういえばはるか昔、この器具を買ったことがあった。
ただし、使ったのはホンの2~3回。
あとはどこに行ったのやら目にすることもなく、
おおかた戸棚の奥にでもうっちゃられていたんだろうな。
キワモノはまず短命に終わるネ。
営業用ならまだしも、
庶民の日常生活に定着したためしがないのだ。

=つづく=