2013年11月19日火曜日

第711話 よみがえった珈琲 (その2)

不忍通りに面した「モスバーガー 千駄木店」にいる。
下げ物はセルフのようだが
注文品はウエイターがテーブルまで運んでくれる。
ほどなくコーヒーが届いた。

ここでハナシは飛ぶ。
こと飲食物に関しては好き嫌いの少ないJ.C.ながら
コーヒーはあまり好きではない。
むしろ苦手なものの代表格といえる。

フレンチやイタリアンの食後に飲む、
深煎りのエスプレッソやカフェ・ルンゴはよくても
日本の喫茶店にありがちな煎りの浅いコーヒーはまず飲まない。
酸味が強いとなぜか胸焼けしてしまう。
苦いのはいいけれど、酸っぱいのは避けてきたのだ。

それでも若い頃はよく飲んだ。
芝公園のホテルで働いていた時分、
フルコースの締めにコーヒーを持ち回ると、
ポットに必ず1~2杯ぶんは残る。
これ幸いとサービス係もそれで一息つくのが常だった。
小ぶりなデミタス・カップとはいえ、平気で2杯も飲んでたのに―。

ときは1989年、北海道・小樽に旅をした。
青森・八戸在住の旧友と札幌で落ち合い、
1日アシをのばしてみたのだった。
観光地化された小樽運河のしらじらしさに
われわれもしらけ切ったりしたが
駅前の三角市場はそれなりに楽しめた。
ただ、やたらめったら蟹のオンパレードだったっけ・・・。

夕方まで時間が空いてしまい、
喫茶店に立ち寄ったのがいけなかった。
コーヒー党の相方につき合ったのが災いの元だ。
胸焼けを通り越して胃の腑を不快感が襲い、
とうとう貴重な旅先の晩めしを棒に振る破目に。
翌朝には回復したものの、
以来、しばらくコーヒーとの関係はプッツリ。
絶好状態が続くことになる。

それがここ数ヶ月、たまに飲んでいる。
きっかけは行きつけの雀荘、文京区・春日の「ロンロン」。
麻雀教室の際にコーヒーと茶菓子が出て
しかもなかなかの香りと味なので
いつしかカップを手に取るようになったのだ。

さて、その日曜日の午後、
千駄木の「モスバーガー」に独り。
おもむろにコーヒーを一口すすって
とびきりバーガーに取り掛かったのだった。

=つづく=