2013年11月15日金曜日

第709話 逝く人 逝く人 (その2)

 ♪ あかく咲く花 青い花 
   この世に咲く花 数々あれど 
   涙にぬれて 蕾のままに 
   散るは乙女の 初恋の花 ♪
       (作詞:西條八十)

島倉千代子のデビュー曲「この世の花」は1955年のリリース。
当時、長野市の幼稚園に入園したばかりのJ.C.は
蕾のままに散る乙女の花のことなど、
からっきし理解できなかったが
チマタに流れるこの曲の歌詞とメロディーはしっかり覚えている。
自宅に蓄音機があり、流行歌を聴くマセたガキだったのだ。

ところがその翌年、夢破れて一家心中、
もとい、なんとか命長らえて東京へ流転したのでした。
幼い記憶に残る楽曲は「この世の花」のほかに

美ち奴―「あゝそれなのに」
高英男―「雪の降るまちを」
春日八郎―「お富さん」
三橋美智也―「リンゴ村から」

てなところでありました。
あとは酔った親父がうなる軍歌の「麦と兵隊」ときたひにゃ、
いやはや、お恥ずかしい限りでござんすヨ。
ヨタもたいがいにして、お千代サンまいります。

島倉千代子(1938―2013)・・・歌手

コブシ封印の美空ひばり。
コブシが命の島倉千代子。
180度異なる歌唱スタイルの二人は大の仲良しだった。
J.C.的にはお千代サンのノドが好み。
細いわりに芯が強く、小粋な余韻を耳朶に残して心地よい。
では恒例のベストテン。

① 東京だよおっ母さん
② 逢いたいなァあの人に
③ この世の花
④ 恋しているんだもん
⑤ からたち日記
⑥ りんどう峠
⑦ 東京の人さようなら
⑧ 思い出さん今日は
⑨ 積木くずし
⑩ 星空に両手を(守屋浩とのデュエット)

冒頭で「この世の花」を紹介したから、あとはやめとく。
そこで一つ、作詞家・星野哲郎のエピソード。
⑧の「思い出さん今日は」は作曲家の船村徹が
F・サガンの小説、「悲しみよこんにちは」を星野に与え、
読後に何か詞を書いてくれ、と迫った曰くつきの作品。

出来上がった詞は船村の意に染まずオクラ入りとなる。
それを拾い上げたのが大御所・古賀正男で
千代チャンが歌い大ヒット。
古賀御大がいなかったら
星野による幾多の名曲は生まれなかったハズ。
寅さんが歌った「男はつらいよ」もまたしかりだ。
時は流れて作った人も歌った人も、みんな逝っちゃいましたネ。