2014年2月4日火曜日

第766話 御徒町のガード下

今年に入ってからだから、つい最近のことである。
浅草の雀荘でY沢サンという、面白い人物と知り合った。
麻雀の腕もさることながら、人柄がとても面白い。
実に好人物なのだ。

平成の世になって早や四半世紀、
なかなかこういう人にはめぐり会えなかった。
欲得の算段に薄く、まず自分の損得を考えない。
一度、卓を囲んだだけで好感を抱いてしまった。

それじゃあ、せっかくだからと一献交えることになった。
初回は浅草の大衆酒場と居酒屋をハシゴしたのだが
数日後、約して再飲した。

場所は上野、厳密には御徒町。
Y沢サンは京成線の青砥在住、
にもかかわらず、めったに上野方面には出て来ないという。
その夜が数年ぶりらしい。
いや、驚いた。

訊けば、以前はフランス料理のシェフを務めており、
時期が微妙にずれているものの、
J.C.と同じシティホテルに在籍していたとのこと。
余計に親近感が湧いてしまった。

とにかくワイワイガヤガヤと飲んでみたいとの仰せ。
青砥界隈の飲み屋は静か過ぎてわびしいそうだ。
それじゃあ、アメ横から御徒町にかけての一帯がよかろうと思い、
この街にやって来た次第。

落ち着いたのは御徒町のガード下、駅のホームの真下である。
サカナのデパート「吉池」直営の「味の笛」が行き着けながら
酒とつまみの品揃えに制限があるのでその数軒隣り、
「かっぱ」の2階に陣を取った。

とにかくこの店はバカ安。
殊に月曜の酒類と土曜のつまみ類は特別サービスデーとなる。
当夜はその恩恵にあやかれない日だったが
それでもかなりの安さである。

ここでは瓶ビールで始め、コップ酒に移行するのが常。
J.C.はその路線でいったが、Y沢サンはホッピーが好み。
ビールを二人で数本飲んだあとはそれぞれの嗜好にゆだねた。

つまみはまず、”セット”という名の串焼き3本。
焼きとんのシロ&レバに焼き鳥のねぎまが1皿に盛られ、
これがたったの210円。
しかもなかなかの水準に達しているのである。
そして気に入りの奈良漬だ。
薄いスライスが10枚ほどで、確か159円じゃなかったかな。
相方も気に入ったようで奈良漬をお替わりする。

焼きとんのカシラ、焼き鳥の正肉を追加したうえに
かきフライなんぞもいただき、
しこたま飲んで、勘定は一人アタマ2500円弱。
心から歓んでもらった。

気の合う相手と交わす酒の旨いこと。
いや、それよりも雀荘で知り合った人物と一緒に酒を飲むのは
わが人生、初めてのことじゃなかろうか・・・。

「かっぱ」
 東京都台東区上野5-27-5
 03-3831-3713