2014年2月25日火曜日

第781話 あとずさりの大衆酒場 (その2)

JR板橋駅西口から徒歩1分の大衆酒場「明星」。
入店直後に後悔の念が芽生えたが
どうにか落ち着きを取り戻して着席した。

店内の模様とはうらはらに
よく見ると、切盛りする女将は小ざっぱりしている。
一本結びではあるが髪をおさげに結っている。
失礼ながら言わせてもらえれば、
はき溜めに鶴とは言えないまでも
はき溜めに鷺(さぎ)くらいはいけるのではないか。

先客はおそらく近所のオジさんだろう、ただ一人。
ポジション的にあちらからは丸見えながら
こちらからは首を振らねば様子が判らない状況だった。
それでも気づかれずにちょこちょこうかがうと、
さんまのひらきで焼酎を飲んでいることは判明した。

おさげの女将に飲みものを訊かれ、
即座に瓶ビールをお願い。
さすがに銘柄を訊ねる余裕はなかった。
出てきたのはキリンのラガーだ。
いいでしょう、許容範囲であるからネ。

おもむろにつまみの品書きをチェックする。
ボードと貼り紙の二段構えながら品目は限定的。
安価な順に紹介してみましょう。

 チーズ・ポテトサラダ・にら玉  各300円
 きゅうりもみ・あつあげ  各320円
 豚もつ煮込み・ウインナー焼き・
 鮭焼き・餃子・ほうれん草  各350円
 まぐろ・さんまひらき 各400円

計12品、これだけである。
どうやら固定メニューではなく、
日替わりで何品か入れ替える方針のようだ。

ほうれん草とあるのは
ごま和えかもしれぬが、おそらくおひたしのハズ。
まぐろは言わずとしれた刺身だろう。
あいや、ブツかもしれないな。

あとに飲み会が控えているから
注文するのはビール1本につまみが1品くらいのもの。
ここでまぐろはさすがにリスクが伴う。
不味い餃子は食えるけど、
ダメな刺身はどうにもならない。

コップに2杯目のビールを味わいながら沈思黙考。
いや、餃子はないだろう・・・煮込みもなァ・・・
鮭じゃ週末の和朝食だぜい・・・ならば、にら玉にしとくか・・・

そのとき引き戸が開いて、お客が到来、
黙考は中断の憂き目をみたのであった。

=つづく=