2014年2月7日金曜日

第769話 焼き鳥はかくあるべし (その3)

有名店ながらロケーションがロケーションなので
神楽坂の隠れ家的店、「白金 酉玉」のカウンターにいる。
ハートランドの中瓶を飲みながら
食べるべき焼き鳥を吟味しているのだ。

目の前には突き出し代わりの野菜スティック。
きゅうり・にんじん・大根が同居している。
あとはうずらの生玉子をポトンと落とした大根おろし。
粗めにおろした鬼おろしだ。

気になったのは卓上に置かれた三色の小樽、
なかなかにオサレだ。
中身を試してみると、赤樽は七味、茶色は山椒、
はて白い樽はなんだろうネ、コレ?
どうも生姜の粉末のようだ。
接客のオニイさんに訊ねたら、やっぱりそうだった。

いの一番の串は丸ハツ、いわゆるハートだ。
キレイに掃除されており、ありがちな血栓は皆無。
丁寧なシゴトといえよう。
小豆(アズキ)は俗にいうチレ、脾臓のことだ。
ずいぶんとレア状態できた。
この時点ですでに串の受け皿は血の海。
気の弱いお嬢さんなら退散するかもしれない。

ちょうちんは金の玉が2個(失礼!)、口中で弾けた。
卵管部分もクチュクチュと味わい深い。
アッサリ甘めのタレによく合っている。
胸肉の脇部分のえんがわはクニュクニュの食感で
そろばん(首肉)に似ている。

続いては大好物の背肝(腎臓)だ。
これは期待したほどのインパクトがなく、やや不満。
雄鶏の白子が入荷しているとのことで即お願い。
天豆(そらまめ)サイズが5個、塩焼きで現れた。
たら白子のようにポン酢も添えられ、まずまず。

締めはキンチャク(雄のホルモン)。
これだけはニンニク醤油味で供される。
おかげで舌の感覚が一気に朝鮮焼肉の世界に突入だ。

ついでだから稀少部位の説明をしときましょうか。

みさき(雌の尾) ぼんじり(雄の尾) 油つぼ(尾腺)
おたふく(胸腺) 心のこり(動脈) おび(モモの外側)
ソリレース(モモの内側) 羽子板(挫骨上部の筋肉)
銀皮(砂肝回りの筋肉) べら(十二指腸)
ぺた(皮の分厚い箇所)

こういう焼き鳥屋なら焼きとん屋に等しく、われは愛す。

=おしまい=

「白金 酉玉 神楽坂店」
 東京都新宿区神楽坂5-7 山桝ハウス B1F
 03-6457-5131