2015年6月8日月曜日

第1115話 渋谷はやっぱり駄目な街 (その2)

東京で一番歩きにくい街が渋谷。
そのエリア内では代々木公園近くの安全地帯から
よりによってわざわざ危険地帯の駅そばに向かっている。

メトロ銀座線のガード沿いにはのんべえ横丁が控えているが
意外とこの横丁、のんべえにとって居心地があまりよくない。
これも渋谷という土地柄の為せるワザだろうか。
フフッ、われながらずいぶん嫌ったものよのぉ。
坊主憎けりゃ袈裟(けさ)まで憎いってか―。

ふと思ったがメトロのガード下ってのもヘンだよねェ。
通常、メトロは地下を走ってるんだから
線路が地上に出てきて
なおかつ、線路の足元にガードがあるってのもなァ。

そう、大江戸線、副都心線など、比較的新しい路線は
地下深くを走っているので地上に飛び出すこともないが
東京最古の地下鉄・銀座線と二番目に古い丸ノ内線は
モグラみたいにひょっこり顔を出しちゃったりするのだ。
それが渋谷であり、四谷であり、茗荷谷である。
ごらんなさい、揃いも揃って”谷”でござんしょう。

当夜はスクランブル交差点から向かって
のんべえ横丁の手前、銀座線ガード下の「にゅう鳥金」に入店。
予備知識どころか名前も聞いたことのない焼き鳥居酒屋だ。
初めて訪れる知らない場所や旅先の場合は
入る店を入念にチェックするけれど、
そうでないところは手を抜くようになった。

第一の理由は晩飯よりも晩酌におもきを置いているため。
食いもんは造り手の舌&腕に大きく左右されるが
飲みもんはまったく関係ないからネ。
「吉野家」で飲もうが「日高屋」で飲もうが
「東急イン」で飲もうが「帝国ホテル」で飲もうが、
キリンはキリンだし、アサヒはアサヒだからネ。

でもって「にゅう鳥金」のビールはスーパードライの大瓶(600円)。
もちろん、あらかじめ店先のメニューボードでチェック済みである。

店内は右手に焼き場があり、
そこを取り囲むようにカウンターが走り、
左手はテーブル席が並び、回り込んだカウンターの前、
実はトイレの前だが、そこにもテーブルが1卓あった。

J.C.が陣取ったのはカウンターの角だ。
この席に案内してくれたウエイトレスが
彼女は間違いなくチャイニーズなのだが
意想外に親切というか、気配りに長けているというか、
いわゆる民族特有の粗雑さがまるでない。
魔が射したとしても他人んちのサンゴを盗んだりはしないタイプだ。
接客係はこうでなければならぬ。
かように「にゅう鳥金」の第一印象は好もしいものであった。

=つづく=