2015年6月30日火曜日

第1131話 偶然の澄ましバター (その1)

先週末の一夜、前話で宣言した通りに自宅で独り酒の巻。
そう、作詞家・横井弘が手がけた珠玉のナンバーを聴きながら
晩酌を楽しんだのだった。
ヒマな一日だったから出来合いのつまみを排除して
自ら自慢の腕を振るおう、そんな気にもなっていた。
手の込んだのは無理だが
チョコチョコっとしたものをチャチャッと作るのは得意なのだ。

まずは買い物、お買い物である。
その前に行き着けた散歩コース、恩賜上野公園へ出向く。
ひとしきり、お山の上を歩いたあと、山下に降ってゆく。
このとき、広小路方面なら買い物は
百貨店・松坂屋かサカナのデパート・吉池となる。

たまたま、その日は不忍池のほとりにやって来た。
寒い時期の渡り鳥はみんな北へ帰った。
代わりに南からツバクロが飛来している。
しかし燕は水鳥ではないから池とは無縁、
水面を泳いでいるのはカルガモだけだ。
ユリカモメの姿はあるものの、彼らはめったに泳がない。

近くのコンビニで缶ビールとプラスチックのカップを購入、
ほとりのベンチで優雅に楽しむ。
楽しみながら考える。
界隈の台東区・池之端と文京区・根津にはスーパーが2軒、
マルエツ・プチと赤札堂がある。
そうだ、わざわざ広小路に出ることもあるまい。
買い物はここで済ませてしまおう。

さすれば、献立を決めねば―。
つらつらと思いをめぐらせると、食べたいモノが二つ浮かんだ。
まあ、どちらも居酒屋メニューなんだが
まぐろの山かけとマカロニサラダ。
ただし、そこいらの居酒屋のソレよりもずっと繊細なヤツがいい。

たとえば山かけはバチまぐろのブツなんかじゃなく、
本まぐろの赤身を使いたい。
山芋は大和芋が望ましいが、これは長芋でもOKだ。
マカロニサラダにしたって、黒胡椒ドバッの刺激的なのじゃなく、
素材を吟味した上品なのがいい。

池から徒歩2分のマルエツに向かう。
ここの本まぐろは常に養殖モノで産地は地中海に浮かぶ小国・マルタ。
以前はずっとトルコ産だった。
マルタにせよ、トルコにせよ、チュニジアにせよ、
地中海で養殖される本まぐろは良質である。

惜しむらくはこの店舗、すでにスライスされており、
いわゆるサクでは売られていない。
よって、ここからさらに徒歩3分の赤札堂に移動したのでありました。

=つづく=