2015年6月15日月曜日

第1120話 さしともと飲んだべサ (その2)

盤上の友・K子老人とひとしきり指したあと、
二人揃って晩酌に出掛けることとなった。
日中は汗ばむほどだったが、
日が沈むと涼やかな風が吹き渡る快適な夕べは
酒交にもってこい、楽しい一夜になりそうだ。

相方にリクエストの有無を訊ねると、
大衆食堂で飲みたいとの仰せである。
K子老人はマイ・ブログの読者であるから
食堂で飲む楽しさをすでに学習済み。
いいでしょう、いいでしょう、お望み叶えて差し上げましょう。

目的地の第一感は、ときわ食堂グループだ。
文京区・本駒込から出向くとなると候補は5軒。
さして広くもないエリアに5軒もの「ときわ」がひしめいている。
これは「巣鴨ときわ食堂」のなせるワザ。

高岩寺、いわゆる、とげぬき地蔵のはす向かいに
古くから店を構える旗艦店を始めとして
地蔵通りの先の庚申塚にオーナーの息子の店があり、
数年前にはJR駒込の駅前にも出店をはたした。

駒込には商店・飲食店が軒を連ねるアザレア通りに
昔から「食堂 ときわ」がある。
したがって何だか縄張り荒らしの感否めず。
それでも駅の東と西の棲み分けが功を奏して
喧嘩入り(でいり)の刃傷沙汰もなく、共存している様子だ。

最後の1軒は「ときわ食堂 動坂」。
都内に50軒ほどある「ときわ食堂」の中でもかなりの古株は
不忍通りに面していて、タクシー運転手の利用が多い。
その反面、地元の呑ん兵衛が夜な夜な集まるので
いつ訪れても立て混んでいる。
「入谷 ときわ」で働き始めた店主が
この地に開業したのは1968年のことだ。

はて、どうしたものよのう・・・。
老いたりとはいえ、まだまだ健脚の衰えを知らぬK子老人。
何処へでも歩いて行くヨ、なんちゃって鼻息が荒い。
さすがに庚申塚は遠いから除外するとして
結局、選んだのは駒込の「食堂 ときわ」だ。

二人肩を並べて夕暮れの動坂をぶらぶら降っていった。
不忍通りと交わる動坂下の交差点を左折する。
途中、くだんの「ときわ食堂 動坂」を左に見つつ、
(このとき老人うらめしそう・・・入りたいんだネ、きっと)
なおも直進して右手の小道に入った。

ほどなく到着した「食堂 ときわ」の最寄り駅はJR駒込だが
地番は北区・田端になる。
住所を頼りに隣り駅の田端で下車してしまうと、
かなりの距離を歩くことになるので要注意だ。
とまれ、TVから一番遠い隅のテーブルに着席した。

=つづく=